80年前の今日は、ノルウェーのトロムセフィヨルドに停泊していたドイツの最新鋭戦艦「ティルピッツ」が転覆し戦闘力を無く(ようするに沈没)した日。1939年竣工のこの戦艦は、「ビスマルク級」の二番艦。排水量43,000トン、最高速力約31ノット、38センチ連装砲4基、15センチ連装砲6基、105mm連装高角砲6基などの兵装に加え、極めて強固な装甲を持っていた。
英国艦隊は、同型艦の「ビスマルク」1隻に振り回された。巡洋戦艦「フッド」が一撃で轟沈、その後ロイヤルネービーのおよそ半数の艦艇を動員して、ようやく沈めた苦い経験がある。「ティルピッツ」は、ドイツが占領しているノルウェーのフィヨルドに身を潜め、北海からバレンツ海へ抜ける英米からソ連への輸送船団を狙っていた。巡洋艦程度の護衛では、この新鋭戦艦に太刀打ちできるはずもなく、もし輸送船団に殴り込まれたら、対ソ援与の物資は海の藻屑である。
そこで、貴重な戦艦・空母を輸送船団の護衛につける羽目になっていた。本当は地中海で、イタリア艦隊を叩くなどに使いたい戦力なのに・・・。チャーチルは英国人特有の執念深さで、この「孤独な女王」を狙った。その闘いぶりを、戦記作家レオンス・ペイヤールが実戦に参加した英独ノルウェーらの軍人にインタビューしてまとめたのが、本書(1965年発表)である。
並みの航空攻撃では歯が立たず、潜水艦攻撃も難しいと知って、特殊潜航艇が選ばれた。X艇と呼ばれた4人乗りの潜航艇で、魚雷ではなく2トン級の爆雷を2機装備していた。周到な計画を立て、6隻を送り込んで何発かは爆発させた。しかし損傷が外目には見当たらず、ついにランカスター爆撃隊が7トン爆弾を命中させて葬った。
実は「ティルピッツ」最大の敵は、英軍ではなくヒトラーだった。ロクに燃料も与えず「Fleet in Being」戦略をとっていた海軍に満足せず、大型艦解体を叫んでいたのだ。所詮陸軍伍長だった彼には、海の戦略は理解できなかったということです。