新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

女運の悪い二枚目、ついにゴール?

 1995年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>。以前紹介した「悪戯」に次ぐ作品で、今回の主役はバート・クリング三級刑事。第一作からの主要レギュラーで、金髪・スマートな二枚目青年である。しかし、女運がとても悪い。最初の恋人クレアとは「クレアが死んでいる」の回で死に別れ、何人か付き合った女性はいるのだがゴールインできない。直前の恋人アイリーンは、囮捜査官ですれ違いに終わる。

 

 冒頭、クリングが刑事部屋を離れて電話した相手は、市警の女性医師シャーリン。デートを断られるのを、仲間に聞かれたくなかったから、雨に打たれて公衆電話を使った。シャーリンも受け入れてくれてデートを重ねるのだが、デート場所に苦労する。それというのも、彼女が黒人だったから。まだこの時点では、白人と黒人はプライベートでは一緒しない。2人が興味を惹かれないでデートできる店は多くないのだ。

 

        

 

 2人のロマンスと並行して描かれるのが、<ロマンス>というミステリー劇を巡る事件。幕開けが迫り稽古に励んでいる主演女優ミッシェルのもとに、脅迫電話がかかってくる。「ナイフで殺す」と言われて警察に相談に行った彼女を、迎えてくれたのがクリング刑事。警戒しようもなかったのだが、ついに彼女が襲われ軽傷を負った。

 

 クリングとキャレラは、劇を売り出すための自作自演ではないかとにらむのだが、2度目には彼女はめった刺しにされて殺されてしまった。最初の傷害はやはり彼女の代理人(兼愛人)の犯行らしいのだが、殺人犯人はわからない。代理人を犯人とみる88分署の刑事と検察官に期限を切られて、2人は演劇界の裏面に分け入って真犯人に迫る。

 

 500ページもの大作ですが、やや冗長とも思える短い会話が多いので、割合早く読めます。ファンとしては、殺人犯の逮捕より薄幸なクリング刑事の<ロマンス>の方が気になってしまいます。