2023年発表の本書は、何冊か紹介した気鋭の政治学者白井聡氏と、思想史に名を残す内田樹氏の対談による「戦争できる国になりつつある日本への警告」。岸田内閣が防衛三文書改訂から防衛費増を決定して、タモリ氏が「新しい戦前」と評した時代の論説である。
ウクライナやガザで本格的な戦闘や虐殺が日常化しているし、米中対立で台湾有事がリアリティを持って語られるようになっている。日本も「新しい戦前ではなくほとんど戦中」だという。
・安倍元総理は、戦後レジームからの脱却として戦争ができる国を目指した
・敵基地攻撃能力などと言っているが、装備があればいいのではなく、実行は難しい
・菅、岸田両政権では、そういうと選挙に勝てるので(強い意思なく)継続している
・米国も政治的不安定で、在日米軍が撤退し始めたら戦争が近いということ

と現状を分析している。ところが、かつてならこのような軍拡に猛反発をした(左翼系)国民が、大きな声を揚げていない。またメディアも、この問題を大きく取り上げていない。むしろ中国等の脅威を煽り立てることが目立つとある。新聞も民放も、記者の人脈的能力が落ちていて、真実に迫れない。
社会全体として幼稚化が進んでいて、評価を気にするあまり馬鹿な事をしようというものがいない。これは点数至上主義の、画一化された教育のせいだとある。経済としては資本主義の終焉が近いのだが、それに代わるものが見えない。そこで<加速主義>が台頭し「壊れるものなら早く壊したい」と思う人が出てくる。その例が、大阪(&日本)維新の会。シロクロ付けたがり、住民投票をやりたがる。
似た傾向は安倍2.0政権以降の自民党でも顕著で、選挙で勝ったら全部OKの風潮を作った。その選挙だが、国民に耳障りのいいことを言い、選挙が終われば忘れてしまう詐欺師ばかりが勝つという。
「有事」の話なのかと思って読んでみたのですが、中身の大半は戦後日本政治(特に自民党&維新)への批判でした。初めて論説に触れた内田氏の言葉には印象深いものもありましたが、既知の範囲を超えた論説・意見ではありませんでした。