1971年発表の本書は、多作家西村京太郎の初期作品。出版社の勧めで往年の名探偵が登場する作品を書くことにした作者が、4部作を書き下ろした第一作。クイーン、ポワロ、メグレと明智が集められて、三億円事件に挑むことになる。大富豪佐藤大造は、模擬「三億円事件」を起こし、その推移を4人の探偵とともに追うことで、事件解決のヒントを得ようというのだ。
モルモットに選ばれたのは村越という青年。事件の容疑者に近いプロフィールを持った男として選ばれ、監視が付けられたうえで佐藤から三億円を奪う役割をさせられる。強奪に「成功」した彼だが、4人の探偵は彼の行動様式を先回りして当ててみせる。佐藤の所有する高級マンションの一室を買った彼は、スポーツカーを買って美女を手に入れるのだが、クリスマスパーティの夜、何者かに刺殺された。

駆け付けた官憲は、4人の探偵と遭遇して唖然とし、さらに計画された事件の全貌を聞いてもっと唖然とする。全編に、4人の探偵の事件(*1)のモチーフが使われていてマニアにはクスリとするシーンが多い。消えたシルクハット、動かされた椅子などなど。そしてお決まりの「読者への挑戦」があるのだが・・・。
巻末の作者と<館シリーズ>の綾辻行人の対談が面白い。この4部作をもっと書いてくれと、学生時代の綾辻は作者に迫ったとある。作者はしんどい割には売れないと、5冊目を書くことはなかった。評論家の評価も高くなく「こんなの喜ぶマニアは日本に8,000人しかいない」と言われたとある。
作者としてはとても難しい(*2)小説ですが、でもこのシリーズを僕は大好きでした。8,000人の一人だったと思います。2冊は買えたのですが、残り2冊は探していますよ。
*1:「ニッポン樫鳥の謎」「スタイルズ荘の怪事件」「男の首」「化人幻戯」等
*2:4人の名探偵にそれぞれ華を持たせるように