新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

政治・経済書

「ロトクラシー」という考え方

2021年発表の本書は、同志社大学政策学部の吉田徹教授の民主主義体制論。なんと、くじ引きで政策担当者(議員等)を決める「ロトクラシー」という政治手法がテーマだ。 現在多くの民主主義国で行われているのが、代表制民主主義。僕たちは民主主義国対専制主…

生産性向上は人を不幸にする

昨日加谷珪一氏の「スタグフレーション」で、賃金が上がらず物価が上がる経済危機の中では、生産性を上げるしかないとの主張を紹介したのだが、2023年発表の本書は、それとは真逆の主張をしている。著者の森永卓郎氏は獨協大学教授、TVでもおなじみの論客で…

必死で生産性を上げるしか

2022年発表の本書は、気鋭の経済評論家加谷珪一氏のインフレーション論。景気後退期のインフレーションを、スタグフレーションと呼び経済学上極めて良くない事態とされている。今の日本は、そうなりかかっているというのが筆者の主張(*1)である。 本書で引…

王族が数万人いて要職にいる国

G20/B20の会合の中で、中露らとは違った意味で困った国なのがサウジアラビア。「国境を越えるデータ」を決して認めず、グローバル経済の足かせとなっている。ただ、本書(2021年発表)の帯にあるように、謎に包まれていて内実が見えない。そこで宗教学と現代…

生活インフラ維持、3つの道

2022年発表の本書は、シリコンバレーのAIベンチャー「フラクタ」CEOの加藤崇氏が、2019年末から<Foresight誌>に掲載した「水道崩壊」という連載をまとめたもの。地中の水道管の、材質・敷設時期・土壌の性質などのデータから劣化具合を推定(シミュレート…

まさに仰る通り!

2022年発表の本書は、経済学者野口悠紀雄教授の「日本経済復活の処方箋」。このテーマは経営視点で論じられることも多いが、本書は賃金と生産性に焦点を当てている。前半は日本経済の現状を統計値から明らかにしているだけだが、後半「どうすれば賃金が上が…

新GDP3位の国のテレワーク

GDPランキングで、ドイツが日本を抜いて3位になったと報じられている。明らかに円安の影響が大きく、本質的には日本の生産性(特に中小零細企業)が伸びていないことが原因と思われる。 2021年発表の本書は、在独30余年のジャーナリスト熊谷徹氏の「ドイツ…

危機が生む政策起業イノベーション

2019年発表の本書は、アジア・パシフィック・イニシャティブの創設者船橋洋一氏のシンクタンク論。冒頭、シンクタンクは世界的な危機(戦争や恐慌)を受けて、設立されたとある。 ・WWⅠ ブルッキングズ、CFR ・WWⅡ RAND、CSIS ・冷戦 PIIE 公正な政策提言を…

この時何が起きたか、来年は何が?

来年11月の米国大統領選挙に向けて、すでに全ての候補者は助走からトップスピードに加速しつつある。ニューヨークに住む友人は、もしトランプ政権(か類似のもの)が再びできるようなら、国外脱出を図りたいと言っている。 2020年の大統領選挙は、有権者は関…

ソフトパワーとしての中国

2021年発表の本書は、ルポライター安田峰俊氏の国際情勢レポート。<月刊Voice>に2020~21年にかけて連載された記事を、加筆・修正したもの。習政権になって「戦狼外交」が顕著になっているが、それ以前は多くの国が米国や日本より好感をもっていた中国に対…

デジタル社会の行きつく先?

2022年発表の本書は、フリージャーナリスト金敬哲氏の韓国ネット社会の現状レポート。韓国は間違いなくデジタル先進国で、電子政府の充実度などは日本の20年先を行っている。金大中時代に始まったIT先進国を目指したインフラ建設は、IMF管理になった暗黒時代…

道徳と市場、2つの論理の境目

本書(2014年発表)は、NHK「ハーバード白熱教室」でお馴染みのマイケル・サンデル教授(政治哲学)が、市場主義への疑念を著したもの。市場主義の深化でこれまで考えられなかったものが売買され、巨額の利益を生むこともある現状のレポートと市民への警告で…

ハーバード成人発達研究の成果

本書は、2023年6月に出版されたばかりの「幸福の研究書」。「人生の指針を示す書だ」と勧めてくれた人がいて、久しぶりに新刊書を買った。ハーバードの「成人発達研究」は、両大戦間にボストンで始まった。2つのグループの人を、世代を越えてトレースして…

日本と日本人はどうすべきか

本書は、2023年2月に出版されたばかりの本。有名な投資家ジム・ロジャーズが日本と日本人に送るアドバイスである。帯裏には6つの難題が示してあって、 ・日本円は捨てられる ・膨大な負債で日本は沈没 ・金利上昇と円安がトドメ ・インフレで競争力低下 ・…

国際的な反新自由主義運動

2022年発表の本書は、国際NGOで市民運動を続けてきたベン・フィリップス氏の反新自由主義運動論。地球上には種々の格差(国・地域・宗教・性別・嗜好・人種・民族等)があるが、究極的には1%のエリートが権力と富を独占し、99%の人から収奪を続けている。…

「統計王子」の政策論

2021年発表の本書は、今は立憲民主党の中堅議員となった小川淳也議員の政策論。ノンフィクション作家の中原一歩氏がインタビュー形式でまとめたもの。小川議員は旧民主党政権で総務政務官を努めたが、民進党~希望の党~無所属~立憲民主党と所属を変えてい…

「無理ゲー」としての地域活性化

2016年発表の本書は、ベテランジャーナリスト山田順氏が「地方創生の闇」を指摘したもの。僕自身20年近く(デジタル屋として)地域活性化には取り組んできたつもりだが、中央政府の「施策」では地域は元気にならないと感じていて、そのモヤモヤ感を吹き飛ば…

無限の展望があった近代の終わり

2017年発表の本書は、以前「資本主義の終焉と歴史の危機」などを紹介した経済学者水野和夫氏の未来展望論。「資本主義の・・・」で収奪するフロンティアが無くなれば、資本主義は終わる、その前兆が金利ゼロだと述べた筆者が、では未来はどうなるのかを示した書…

帝国主義プーチンの後を見据えて

2022年発表の本書は、ジャーナリスト大野和基氏が世界の知性にインタビューしてまとめたもの。PHP新書で何冊も紹介したのだが、宝島社新書からも出ていた。テーマはプーチンの戦争とその後。6名の識者に加え調査集団「ベリングキャット」創始者エリオット・…

西洋文明の行き詰まりを打破

2021年発表の本書は、何冊も紹介しているVoice編集部編の世界の賢人もの。今回は東洋の賢人たち6人が登場する。欧州の賢人たちも、西洋文明の行き詰まりは認めていて、反グローバリズムや反テクノロジー、倫理への回帰などを訴えているが、東洋の賢人たちの…

移民問題の地道な解決策

いわゆる「西側」欧米諸国を揺るがしているのは、殺到する移民・難民問題。ロシアが難民を意図してNATO諸国に送り込んで、政情不安を狙っているとも伝えられる。 もはや「兵器」と化した難民 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) 適度に広い海で大陸と…

問題の根源は「日本人の心」

2019年発表の本書は、雇用ジャーナリスト海老原嗣生氏の日本の年金制度論。少子高齢社会になって多くの人が不安を持つ年金問題は、実は日本人の心の問題(病?)だという。年金問題が大きく取り上げられる背景は、政治闘争によるもの。それをメディアが拡幅…

勇気をもって真実を語る

本書は、派閥も無くしてニュースに取り上げられることも少なくなったのに、未だに「次の総理は誰」アンケートで3本の指に入る自民党石破茂議員の近著。<デイリー新潮誌>に2021年2月から1年間にわたって連載したコラムを、1冊の本にまとめたもの。菅~…

本書の発表から1年半

本書は、以前「令和の国防」「歴史の教訓」を紹介した元外交官兼原信克氏の近著。2022年末の出版で、内容としては紹介した両著書をなぞるものとなっている。前2作はそれなりの関心を持って読んだのだが、今年初め「正論」の会合に出席して、僕自身ちょっと…

選挙特番・国会中継に映らないこと

「パリ研修」など国会議員の外遊増に批判が集まっている。国会議員については、一般人は選挙特番や国会中継、精々政治討論番組で目にするくらいだ。その実態と課題、改善策について記されているのが本書(2022年発表)。著者の濱本真輔氏は大阪大学准教授(…

ピンチこそ構造改革のチャンス

本書は、2015年に単行本で出版されたものを、2021年に加筆されて新書版で再版されたもの。8,000億円近い赤字を出して「会社が無くなるかもしれない」との危機から、構造改革でV字回復を成し遂げたマネジメントのお話である。 といっても、本書は僕にとって…

日本型閉鎖組織の改善策

2022年発表の本書は、同志社大学政策学部太田肇教授(経済学)の日本型組織研究。筆者には、同調圧力や承認欲求に関する著書がある。本書の目的は「消極的利己主義」が日本に蔓延している現象と理由、さらに解決策を示すこと。日本型組織は、 ・行政機関や企…

自国通貨建ての国債デフォルト

昨日「強権の経済政策」でジャーナリスト軽部氏の「アベノミクス評価」を紹介したが、では日本経済をどうすべきなのかを改めて見直すために、本書(2022年発表)を買って来た。著者の田村秀男氏は元日経の記者、現在が産経新聞で論説委員などをしている。長…

やはり要諦は人事

2020年発表の本書は、ジャーナリスト軽部謙介氏の「アベノミクス」評価。先に「官僚たちのアベノミクス」(2018年)という著書があるようだが、入手できていない。2012年末の総選挙で政権に返り咲いた自民党は、以降10余年にわたって政権を維持しているが、…

海外の視点で見た「デジタル日本」

2021年発表の本書は、「ルポ貧困大国アメリカ」などを著したジャーナリスト堤未果氏のデジタル日本への警告。以下の点は僕もよく知っていて、推進側を努めているのだが、批判的な視点だとこうなるのかと驚かされた。 ・最高権力を持つ「デジタル庁」 ・政府…