政治・経済書
2010年発表の本書は、当時東京都知事だった石原慎太郎氏の「リーダー論」。高名な作家で、政界にユニークな足跡を残した人であり、日本が覚醒するような議論を(ある時は過激に)展開し続けた人である。 日本人に誇りを持たせるためか、真実ではないかもしれ…
本書は、昨日紹介した「自衛隊最高幹部が語る台湾有事」と同様、中国軍の台湾侵攻をシミュレートした結果のレポートである。シミュレーションは国会議員10名余で、2022年に実施された。筆者山下裕貴元陸将は、その企画・指導役だった。 数ヵ月に渡って偽情報…
台湾有事について、自衛隊OBや政治家、シンクタンク研究員等が、2021年の8月に丸2日かけてテーブルトーク型シミュレーション(TTX)を行った。その推移と、結果を受けた座談会の模様(*1)を記したのが本書。参加者には僕の知人の名もあった。 シナリオは…
2023年発表の本書は、記者からフリーライターに転身した栗下直也氏の「政治家のお酒通信簿」。古来為政者は、周囲の人の真意を知るために酒宴を利用した。ロシアのピョートル大帝などは、3日3晩の宴会に側近たちを閉じ込め酒を呑ませ続けた。もちろん為政…
以前文書新書の「世界地図シリーズ」を何冊か紹介した。今日から4日間、おなじ文春新書の「日本地図シリーズ」で書棚にある4冊を紹介したい。初日の今日は、県民性もしくは地域性に関するもの。著者の武光誠氏は、明治学院大学教授で専門は歴史哲学、思想…
2022年発表の本書は、気鋭の政治学者白井聡氏と抗う新聞記者望月衣塑子氏の現代政治批判書。安倍元総理が亡くなった後の選挙で、立憲・共産連携がぎくしゃくし、両党が議席を減らし維新の会が台頭した後の政治情勢を分析したもの。基本的には、自民・公明・…
2023年発表の本書は、比較政治学・国際関係論が専門の東京大学恒川恵市名誉教授の新興国論。多様な切り口と経済指標から、新興国と呼ばれる29ヵ国の経済・政治・軍事を論じたもの。1970年ごろ新興国だったシンガポールや韓国は先進国入りして、今は次の国々…
2022年発表の本書は、国税調査官出身のフリーライター大村大次郎氏の「世界の歴史・経済論」。もちろん世界を動かしている最大のものは、イデオロギーや宗教、軍事力ではなく「お金」である。その視点から、通常表には出てこない真実がいくつも紹介されてい…
2022年発表の本書は、第一次・第二次安倍政権で内閣広報官、総理大臣補佐官を務めた長谷川榮一氏の「官邸録」。憲政史上最長となった政権を、主に広報畑から支えた人で、数々の「秘録」をお持ちのはず。しかし前書きの中に「内閣法で職務上知り得た秘密を秘…
2016年発表の本書は、日本文化にも造詣の深い政治学者で在沖縄海兵隊にも所属したことのあるロバート・D・エルドリッジの「オキナワ論」。沖縄にある米軍(専用)基地の再編や削減などについて、米軍も日本政府も失敗したという。例えば、最も大きな争点である…
2018年発表の本書は、毎日新聞記者で福島第一原発事故のその後を取材し続けている日野行介氏が「21世紀最悪の公共事業」の実態を綴ったもの。福島県を中心に広範囲に放射性物質が散布された事故で、その除染のため2016年度までで2.6兆円とのべ3,000万人の従…
本書は、何度か紹介しているフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏のインタビュー記事の書籍化。2013~21年に文芸春秋誌に掲載された記事を11編収録している。英米から欧州、ロシア、中国に言及するとともに、日本の現状課題や将来の方向性について…
2019年発表の本書は、以前「この国のたたみかた」を紹介した中央大学名誉教授佐々木信夫氏の日本列島構造改革論。「この国・・・」同様、全国を10州に再編し、東京・大阪の2都市州を加えることで、130年前の「廃藩置県」に相当する「廃県置州」をなすとある。…
2022年発表の本書は、大阪大学至善館教授橋爪大三郎教授と、ご存じ<元外務省のラスプーチン>佐藤優氏が対談した、新時代を読み解く針路。橋爪教授の本は初めてだが、著書を見ると社会学者で中国研究をされているよう。佐藤氏はあだ名の通りのロシア通だ。 …
2022年発表の本書は、東京新聞論説委員で10年以上厚労省を取材してきた鈴木穰氏の同省概説。内側から見た千正康裕氏の諸作(*1)と併せて読むと、この巨大官庁の実態・課題が良く分かる。 「COVID-19」禍で予算が急増しているが、それ以前から一般会計の1/3…
本書は先月発売になったばかりのもの。渡辺弘美氏とは15年程前に知り合い、業界団体の場でデジタル政策を論じてきた縁で、新刊書を送っていただいた。筆者は旧通産省で産業政策を21年、アマゾン合同会社でロビーイング15年の経験を持ち、現在は公共政策を向…
2019年発表の本書は、ジャーナリスト安田浩一氏の「団地は移民のゲートウェイ」との主張を現地取材を重ねて裏付けたもの。高度成長期に近代的な住宅として整備された「団地」だが、50年以上経って老朽化が進み住民も高齢化し、外国人比率も高まった。取り上…
2015年発表の本書は、元東京地検特捜部で現在は「郷原総合コンプライアンス法律事務所」所長の郷原信郎弁護士の著作。本書のタイトルにもなっている「告発」は、刑事訴訟法によって何人でもこれを行うことはできる。しかし組織犯罪(詐欺等でなくても品質偽…
2021年発表の本書は、実践型の企業再建屋冨山和彦氏が、高名なジャーナリスト田原総一朗氏と4回にわたって対談した結果を書籍化したもの。冨山氏については、 昭和の因習を脱ぎ捨てよ - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 「中堅企業」支援の方向性(2) - 梶浦敏…
本書は、BS朝日の「町山智浩のアメリカの今を知るTV」で、2016~22年にかけて放映された内容をもとに書籍化された「現代アメリカの病巣」論。町山氏は映画評論家でジャーナリスト、相方の藤谷文子氏は女優。いくつものインタビューを交えながら、ドラマのよ…
2022年発表の本書は、日本の中にいると空気のように感じている「国籍」問題を取り上げた、早稲田大学国際学術院教授陳天璽氏の著作。著者自身30年ほど無国籍の状態だった。両親が台湾から太平洋戦争後横浜に引き揚げて来て台湾国籍だと思っていたら、日中国…
2023年発表の本書は、眼光鋭い元海将香田洋二氏の「防衛省に対する喝!」である。一度パネルディスカッションでご一緒したことはあるが、著書を紹介するのは初めて。集団的自衛権行使が可能になり、防衛予算も欧州各国並みのGDP比2%への道筋は付いたものの…
今月日本経済の行方について、2冊の対照的な書(*1)を紹介した。どうしても生産性向上は悪だとする森永教授の主張は受け入れがたく、もう1冊日本の成長戦略を語る本書(2022年発表)を読んでみた。著者松江英夫氏はデロイト・トーマツの執行役員、主張は…
2020年発表の本書は、欧州暮らしが長く6ヵ国語を話すフリージャーナリスト宮下洋一氏の<排外的ポピュリズム>レポート。筆者は、チェコ・オランダ・ドイツ・イタリア・フランス・イギリスを巡り、ポピュリズム政党党首や市民、移民にもインタビューして事…
2020年発表の本書は、国際政治評論家白川司氏の「日本学術会議追及」。菅内閣がこの組織の構成員半数の改選にあたり6名を選ばなかったことから、多くの市民にこの組織のことが知られるようになった。本書は同会議の問題を追求したものだが、多少偏向してい…
来年の米国大統領選挙も、この顔合わせになると予想されている。2021年秋、バイデン政権が誕生した後に、同志社大学法学部の村田晃嗣教授が発表したのが本書。その年、一応の決着は付いたはずなのに「選挙は盗まれた」と信じるトランプ支持者も多く帯にある…
2021年発表の本書は、同志社大学政策学部の吉田徹教授の民主主義体制論。なんと、くじ引きで政策担当者(議員等)を決める「ロトクラシー」という政治手法がテーマだ。 現在多くの民主主義国で行われているのが、代表制民主主義。僕たちは民主主義国対専制主…
昨日加谷珪一氏の「スタグフレーション」で、賃金が上がらず物価が上がる経済危機の中では、生産性を上げるしかないとの主張を紹介したのだが、2023年発表の本書は、それとは真逆の主張をしている。著者の森永卓郎氏は獨協大学教授、TVでもおなじみの論客で…
2022年発表の本書は、気鋭の経済評論家加谷珪一氏のインフレーション論。景気後退期のインフレーションを、スタグフレーションと呼び経済学上極めて良くない事態とされている。今の日本は、そうなりかかっているというのが筆者の主張(*1)である。 本書で引…
G20/B20の会合の中で、中露らとは違った意味で困った国なのがサウジアラビア。「国境を越えるデータ」を決して認めず、グローバル経済の足かせとなっている。ただ、本書(2021年発表)の帯にあるように、謎に包まれていて内実が見えない。そこで宗教学と現代…