新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

壊れてしまった世界秩序

2022年発表の本書は、ロシアの侵攻後半年の時点での「変わってしまった世界秩序」について5人の有識者とジャーナリスト峯村健司氏が対談した記事を書籍化したもの。注目されないロシア研究を黙々と続け、一躍時の人となった小泉悠専任講師は100ページも思い…

満清支配をくつがえせ!(後編)

闘いの訓練も受けておらず老若男女が混じっている叛乱軍ゆえ、時折痛い目にも遭うのだが、東王楊秀清の指揮もあって北を目指して進撃する。行く先々で清朝に不満を持つ民衆が参加してくるので、軍勢は増えていく。 ただ中心たる洪秀全は、ほとんど表に出てこ…

満清支配をくつがえせ!(前編)

今年陳舜臣の「琉球の風」を読んで、知らなかった歴史に感動した。そこでもう一歩踏み込んで、中国の近世を知ろうと思い手に取ったのが本書(全4巻)。1969年から3年間にわたって<小説現代>に連載されたものだ。アヘン戦争後の中国、清朝は揺らいでいた…

日本に自律と核武装を勧める

本書はフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏が、ウクライナ紛争後の世界についてインタビューに応えたもの。侵攻後1ヵ月前後に2度受けたインタビューが基になっていて、他の2つの記事はこれらを補完する目的で、2017年と21年のものを再掲してい…

イスラム教シーア派の主導国

2021年発表の本書は、共同通信社で2年間テヘラン支局長を務めた新冨哲男氏のイランレポート。イランはシーア派イスラム教徒の主導国で、イスラエルを攻撃している<ハマス><ヒズボラ><フーシ派>の後ろ盾である。 紀元前550年、この地にアケメネス朝ペ…

「洪門」という根強い勢力

昨日の「中国vs.世界」に引き続き、安田峰俊氏の中国論を紹介したい。それも特別にドロドロしたテーマである秘密結社。広大な土地を治めるには、地方分権型では上手くいかない。古来の王朝も、今の共産党政権も、 ・中央に絶対的な権力を集中 ・地方には中央…

交渉なくして和平なし・・・ならば

2023年発表の本書は、アフガニスタンなどの戦争終結に関する試みを多く経験した上智大学(グローバル教育センター)東大作教授の手になる「ウクライナ戦争終結への道」。大国が小国を相手に勝てず、結局は退いた例(ベトナム・アフガニスタン等)は多いが、…

明白に罪になってしまう事も

本書はこれまで5冊紹介した、21世紀研究所の「世界地図シリーズ」の1冊。昨年紹介した「常識の世界地図」は、海外旅行に行くとき(あるいは外国人を迎えたとき)に注意すべきことが書いてあった。日本人が知らない、外国では明白に罪になってしまうことも…

第四帝国への道?

2021年発表の本書は、以前「ドイツ料理万歳」を紹介したドイツ在住の作家川口マーン恵美さんの現代ドイツ政治史。日独の文化の違いを著した書が多い筆者だが、本書はシリアスな政治考。2005年に統一ドイツの首相に就任して、長期政権を築いたアンゲラ・メル…

戦場を往来した郵便コレクション

今日10/9は「世界郵便の日」である。本書(1991年発表)は歴史・軍事作家柘植久慶が、その「郵便愛」を存分に綴ったもの。取材で世界を巡る作者は、ロンドンの切手商で義和団事変に出征したドイツ兵が故郷に送った手紙を見つけた。それ以降多くの軍事郵便を…

テロが手段から目的に替わり

1983年発表の本書は、以前「過去からの狙撃者」などのスパイスリラーを紹介したマイケル・バー=ゾウハーのドキュメンタリー。1972年9月、ミュンヘン五輪の最中に起きたパレスチナゲリラの人質事件が帯で強調されているが、実質的に20世紀のパレスチナ紛争…

ハイブリッド戦争の最前線

昨日NTTHDの横浜CISOの近著「サイバーセキュリティ戦記」を紹介したのだが、本書も最新刊、横浜氏のチームのストラテジスト松原実穂子氏のウクライナ紛争レポートである。著者は、防衛庁から複数の企業を経験して現職にある。昨年度の「正論大賞:新風賞」の…

DATA Science in WWⅡ

1994年発表の本書は、伝説のゲームデザイナー、ジェームズ・F・ダニガンが、アルバート・A・ノーフィーと一緒に書いた「WWⅡ雑記帳」。戦史として遺されなかった細かなことや、都合の悪いこと、統計が示す厳然たる事実などを紹介している。ゲームデザインのために…

ゾルゲらを捕まえた特務機関

プーチン大統領が子供の頃からKGB入りを希望したのは、第二次世界大戦におけるゾルゲらの活躍を知ったからだという。「1人のスパイが数個師団に値する」これが少年プーチンの心に火をつけた言葉だった。 2003年発表の本書は、日本には幻の特務機関があって…

第二帝国崩壊の真実

第二次欧州大戦の経緯は、多くの書籍・ゲームで知っているのだが、第一次の方はというと、日本軍が大きな役割をしなかったせいか知識が薄い。 枢軸国:ドイツ、オーストリア=ハンガリー、トルコ他 連合国:フランス、ロシア、イギリス、イタリア、アメリカ…

シャリーアのみによる統治

2022年発表の本書は、米軍撤退後のアフガニスタンにおけるタリバン政権の状況と未来を考察したもの。同志社大学内藤正典教授(国際関係学)が、国連事務総長特別代行としてアフガニスタン支援ミッションを指揮してきた山本忠通氏にインタビューしてまとめて…

なぜイスラムは声を挙げない?

2021年発表の本書は、中国の新疆ウイグルにおけるウイグル族弾圧に関する考察。社会学者橋爪大三郎教授と、イスラム学者中田考氏の対談で構成されている。ウイグル族弾圧について欧米の報道はいくつもあり、強制連行・抑圧・暴力・文化的破壊・漢民族化・レ…

事実か小説か、17歳リックの冒険

朝鮮戦争末期の1952年春、米国海兵隊の6名が旧満州吉林近くの人造湖に潜入した。目標は中国共産党が稼働させている原子力研究所。国民党軍や地元ゲリラの助けを借りて、これを破壊せよというミッションだった。若干17歳でこの作戦に参加したローレンス・ガ…

粛清と虐殺に明け暮れた独裁者

2022年発表の本書は、国際政治学者(元都知事というべきか?)舛添要一氏の独裁者シリーズ。前2冊はムッソリーニとヒトラーを取り上げたとあるが、トリのスターリンは2人を合わせた以上の「怪物」だったようだ。 グルジア(現ジョージア)生まれのヨシフ・…

NATO加盟の議論の前の予習

今日から始まるNATOの会議に、韓国の尹大統領とともに岸田総理が出席するという。もし日韓両国が加盟などということになったら、もはや「北大西洋」ではなく「北大洋」条約になって、NATO→NOTOになるかもしれない。 2021年発表の本書は、以前「プーチン幻想…

進化心理学から見たフェイク史

2022年発表の本書は、認知科学を専門とする石川幹人博士のフェイク史。フェイクニュースが社会全体の脅威になりつつある今、科学的な対応が可能かを知りたくて本書を読んでみた。 「協力するサル」である人類は、食糧の少ない草原で生きるため、50~100人の…

21世紀最大の市民運動

1997年の今日(7/1)、香港は中華人民共和国に返還された。中国の一部とはなるのだが、その後最低50年はこれまでの世界に開かれた都市である「一国二制度」が続くはずだった。しかし結果は、その半分も期間も経たないうちに、事実上併合されてしまった。 202…

大戦が破壊した欧州の精神構造

1914年の今日(6/28)、サラエボでオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子夫妻が暗殺されたことで、欧州における100年の平和は破られた。あしかけ5年にわたる第一次世界大戦の始まりである。欧州では「大戦」といえば第一次を指すことが多い。第二次は第一次…

PKO任務が持つ2つのリスク

2022年発表の本書は、ジャーナリスト布施祐仁氏の日本PKO録。闘わなくてもいい軍隊としての自衛隊の実態や課題を多くの書で見てきたが、自衛隊員が本当に撃ち合いになるかもしれないと感じたケースのほとんどは海外派遣(PKO)だった。 筆者はイラク派遣の実…

20世紀、空の闘いのドキュメント

1996年発表の本書は、航空小説作家のスティーブン・クーンツが、第一次世界大戦からベトナム戦争までの空の闘いを記したドキュメンタリーを抜粋・再編したものである。邦題は「撃墜王」となっているが、収められている21の物語には戦闘機だけではなく爆撃機…

21世紀、ロシアの謀略・工作

2020年発表の本書は、日経紙でモスクワ特派員などを経験した古川英治氏のロシア謀略レポート。かつての超大国ソ連は解体され、ロシアが世界有数と思えるものは核戦力くらいしか無くなってしまった。ハードパワーもソフトパワーも、世界10位に入るのは難しい…

軍部専横のきっかけ

昨日「満州某重大事件」こと張作霖暗殺事件の首謀者、河本大作(当時)大佐の一代記を紹介した。この事件を戦前日本の凋落のきっかけとなったものと捉えた歴史家大江志乃夫が、昭和天皇が亡くなった後の1989年に発表したのが本書である。 暗殺事件は1928年6…

超大国の時代を前にした決断

本書は1978年に発表された、陸軍大佐河本大作の一代記である。河本大佐といえば「満州某重大事件」の首班で、当時北京から中国東北部に勢力を張って「大元帥」と言われた張作霖を暗殺した人物として知られている。1928年、中国大陸の動乱は収まる気配を見せ…

兵士の顔が写っている!

ロバート・キャパは、ハンガリー生まれのユダヤ人。本名をアンドレ・フリードマンという。20歳前に生まれ故郷のブダペストを脱出、ベルリンからパリへ渡り写真家を目指した。彼はスペイン内戦で取材をし、兵士が銃弾に斃れる瞬間を切り取った写真が<ライフ…

潜水艦艦長の架空戦記

本書は、以前「本当の潜水艦の戦い方」を紹介した中村秀樹氏の架空戦記。作者は海上自衛隊で潜水艦長を経験し、防衛研究所での太平洋戦争の潜水艦戦史研究で知られた人。 隠密性が命の難しい艦種 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) テーマは定番のミッドウェー海…