新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歴史・軍事史

戦争という仕事の9割

1977年発表の本書は、ヘブライ大学教授で歴史学者のマーチン・ファン・クレフェルトが、16世紀以降の欧州における軍事行動を「兵站」に着目して整理した書。著者は発表当時31歳の若手学者だが、深い洞察と明快な語り口で俗説を「斬って」いる。 「戦争のプロ…

艦隊決戦のための可潜艦

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「潜水艦」である。すでに同文庫の「本当の潜水艦の戦い方:中村秀樹著」は紹介しているので、重複のないように第二次世界大戦までの日本と各国の潜水艦について記しておきたい。 隠密性が命の難しい艦種 - 新城彰の…

戦前民主主義のピーク

1936年と言えば「2・26事件」が勃発し、クーデターそのものは失敗に終わったものの以後軍政が強くなり、日本は日中戦争から太平洋戦争へと傾斜していったメルクマールの年だ。後世の評価ではもっぱら悪者は陸軍、「皇道派」と「統制派」の対立もあり、血なま…

戦えなかった翼

何度か第二次世界大戦前後の航空機開発事情や、マイナーな航空機を特集した本を紹介している。今回は日本の戦闘機に絞って、しかも試作のみに終わるなどして空で戦うことができなかった機体を紹介したい。 制空権なきものは必ず敗れるわけで、制空の主役は戦…

世界で2番目に古い職業

本書はジャーナリストから国際政治学者になった松本利秋氏が、2005年に発表したもの。以前からその傾向はあったのだが、国家間紛争に正規軍ではなく「傭兵部隊」が進出してきていて、21世紀にそれが顕著だという。目立つのは米国の「テロとの戦い」、先ごろ…

どこか令和に似た時代

大正時代というと、15年と短かったこともあり、華々しい明治と激動の昭和に挟まれて、あまり目立たない時代である。本書は歴史人口学の視点から、2人の研究者が大正時代を分析したものだ。歴史人口学(デモグラフィ)だから、拠って立つのは「人口動態」。…

戦争省電信室、1861-65

本書(2006年発表)の冒頭、9・11以降のイラク・アフガン戦争を戦っている米国ブッシュ政権の支持率が低下していて、大統領は再三リンカーン大統領を引き合いに出して市民を鼓舞しているとの記事がある。本書の著者で国際報道のベテラン内田義雄氏は、米国の…

「この名前ってなぜ」で分かる歴史

<ニューオリンズ>という街が米国にあるが、その語源が「新しいオルレアン」だと聞いたのが、僕が最初に地名に興味を持ったきっかけ。まだ学生時代のことだった。その後ある文字が付いているところは、かつては沼で洪水が多いと不動産屋から聞いたこともあ…

兵は詭道なり

孫子の兵法にこのような言葉がある。人類の歴史に戦争はつきもの、その始まりの頃から「戦いは騙し合い」だったということだ。これはサイバー戦争の時代となった今でも変わりはない。本書には詳しく語れば1冊の本になるエピソードが、多数詰め込まれている…

大国の資格としての饗宴

2007年発表の本書は、おおむね2000年以降の大国元首の外国訪問を例にとり、その場で出された料理とワインについてコメントしたものである。著者の西川恵氏は、毎日新聞の専門編集委員。各地の海外支局勤務を経て、外信部長になった人。「エリゼ宮の食卓」な…

150年前から中国は主役

本書の著者平間洋一氏は、海上自衛隊で「ちとせ」艦長なども務めた人。防衛大学校教授・図書館長などを経た歴史・軍事史の専門家である。2000年発表と少し古い本だが、21世紀日本の外交スタンスはどうあるべきが書かれていて、今に至るも(至ったからこそ)…

最も美しい戦艦

第一次世界大戦に敗れ、海軍の艦船保有に制限を設けられることになったワイマール共和国だが、シェットランド沖海戦に臨んだような大艦隊を夢見る人は多かった。当時世界最大の海軍だった大英帝国の主力艦隊を正々堂々迎え撃ち、ほぼ引き分けの結果を得たこ…

20世紀、空を制した技術

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「戦闘機」である。最初は上空から戦場の様子を偵察する目的で、気球や飛行船と共に実用化された航空機だが、そのうちに相手を撃ち落とす役割を持つようになった。第一次世界大戦でもすでに「エース:5機以上を墜と…

ヒコーキ博士佐貫亦男

世に「ヒコーキ」というものに憑りつかれた人は少なくないが、そのなかでも大物が本書たちの著者佐貫亦男博士である。東大航空学科卒、陸軍の97式戦闘機のプロペラ設計を担当している。その後ドイツへ出張、戦争の激化により帰国できなくなり1943年末までド…

中国人、アラブ人、アメリカ人に注意

先日APEC/ABACの報告会に出席して、久し振りに東南アジアのことを考えるようになった。そこで20年ほど前に読んで、よくわからなかったこの本を、再読することにした。2000年に、京都大学東南アジア研究センター白石隆教授が著わしたもの。19世紀以降の東南ア…

反日原理主義の国

3月に韓国大統領選挙があるのだが、それを前にして与党・野党・もうひとつの野党の候補者が、暗闘を続けている。人気だった野党候補者は、内輪もめで選挙対策本部を解散させるし、与党候補者は「髪の毛の植毛」などと意味不明の政策を主張している。日本人…

不滅の内政・外交教本

「小さな政府」を標榜して、レーガン・サッチャー改革、日本では評判の悪い小泉・竹中改革を支持しておられるのが塩野七生さん。これまでにも何冊か著書を紹介しているが、本書は中世フィレンツェの政治家ニッコロ・マキャベリの遺した言葉を、著者の感性で…

この国の本質は「外華内貧」

韓国では来年の大統領選挙に向け、史上最も汚らしい選挙戦との揶揄される候補者間のけなし合いが続いている。国を二分する選挙戦なのは確かなのだが、なぜこんなことになるのか不思議な思いをして本棚から引っ張りだしたのが本書。 まだ韓国がOECDに加盟した…

帝国海軍の「歩」

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「小艦艇」である。俗に「歩のない将棋は負け将棋」というが、海軍の作戦遂行は戦闘艦だけでは行えない。さまざまな用途をこなす艦艇(必ずしも小さいとは限らない)の支えが必要だ。本書は、そんな目立たない艦艇を…

三民主議を目指した政治的軍人

先週、竹内実著「毛沢東」を紹介したが、本書はそのライバルだった国民政府総統蒋介石について、歴史探偵の一人保坂正康氏が記したもの。現在のホットスポットである、台湾海峡の緊張を産んだ人物でもある。 軍事史に詳しい松村劭元陸将補によれば、蒋介石率…

ダウニング街10番地、1941

太平洋戦争開戦前の日本の状況(2・26事件から東條内閣誕生等)については多くの著書があるし、米国の状況(ルーズベルトの不戦公約等)についてもいくつか資料はある。ヒトラーの戦争指導や日ソ不可侵条約などの他の関係国のことも、少しは読んである。しか…

習大人が真似ている男

共産党100周年式典に北京冬季五輪、着々と三期目を目指す習大人だが、彼が手本としているのが「毛沢東主席」。知っているつもりだったが、実際どんな人かは忘れてしまった。そこで古い(1989年発表)本だが、本書を引っ張り出してきて再読した。著者の竹内実…

ああ、特攻兵器

太平洋戦争を控えて、あるいはそれが起こってしまってから、米国に対し少なくとも1/10ほどしか国力のない日本としては、どんな手段を使ってでも戦局を有利に運ぼうとしてあがきまくった。まだ戦前は、本書の冒頭にある「水中直進弾」を開発し、軍機として秘…

陸軍主計大佐新庄健吉

太平洋戦争の開戦にあたり、米国への宣戦布告文書手交が真珠湾攻撃から1時間弱遅れたのは事実である。その理由としては、宣戦布告文書が在ワシントンDCの日本大使館に送られてきたものの、その翻訳とタイピングに時間がかかって手交時間に指定された現地時…

スペクタクル・ラブロマンス

戦争映画好きの僕だが、実際に映像ソフトとして購入したものは多くない。大半はBSチャンネルで録画できるからだ。しかし例外はあって、なぜかこのソフトだけは本棚に残っている。それは、2001年ディズニー系の映画会社タッチストーン・ピクチャーズ製作の「P…

帝国陸軍の「神」

光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「砲兵」である。伝説のゲームデザイナーであるジェームス・ダニガンは、第二次世界大戦の記録を読み込んで、兵士の死傷者の多くは砲撃によるものだと結論付けた。よく戦争映画でライフルで敵兵を斃すシーンがあるが…

ジャーナリズムを鍛えるもの

本書の冒頭、「戦争を戦争として承認する役割を担っているのはジャーナリズムだ」とある。1991年の湾岸戦争後、イラク周辺では戦闘が続いていた。しかし2002年に(子)ブッシュ政権がサダム・フセインの息の根を止める決意をして再度侵攻するまでの間、そこ…

偽装・隠ぺい工作に挑む地方検事

昨年はミリタリー作家の柘植久慶が、ケネディ暗殺事件を暗殺者の視点でフィールドワークした「JFKを撃った男」を紹介している。本書はニューオーリンズの地方検事として、ケネディ暗殺事件の疑惑に執念で挑んだジム・ギャリソンが記したドキュメンタリーであ…

今、どの国にいると思っている?

「COVID-19」の感染拡大が、ロシアでは顕著だという。ワクチン接種も進まず、医療の逼迫は必然だ。加えて悪性のインフレが経済を襲い、石油・天然ガスの値上がりで景気が良くなるというわけでもなさそうだ。プーチン政権の危機という説もあるが、米国と並ぶ1…

HUMINT工作に学ぶ

2016年発表の本書は、元警視総監吉野準氏の手になる「HUMINT工作の教科書」。筆者は、 ・警視庁公安部参事官 ・警視庁警備局局長 ・ユーゴスラビア大使館書記官 ・内閣総理大臣秘書官 などを歴任していて、国内の防諜活動やテロ対策、海外における諜報機関と…