新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2月の凍てつくニューヨーク

 以前「CSI:科学捜査班」のラスベガスシリーズをご紹介しているが、「CSI」にはスピンオフとしてマイアミとニューヨークがある。本書は、そのニューヨーク版のノベライゼーション。一流作家にTVドラマとしてのCSIのシチュエーションだけ使わせ、自由にミステリーを書いてもらうというのがこのシリーズの特徴。ニューヨーク編の作者に選ばれたのは、スチュアート・カミンスキー。多くのサスペンス作品があるが、ニューヨーク市警のユダヤ系老刑事、エイブ・リーバーマンを主人公にしたシリーズが好評だという。

 

 ニューヨークの科学捜査班も、犯罪学者のマック・テーラーをチーフに各種の専門家が集まっている。ただラスベガスのように、各自の専門が特に強調されることはない。検視官も殺人課の警官たちもいる、ある意味普通のポリスストーリーだ。舞台となっているニューヨーク、以前8月のマンハッタンの暑さは半端ではないという作品も紹介しているが、2月の寒さも同様に半端ではない。本書(2008年発表)では、マイナス20度の寒さでしかも暴風雪に見舞われる中、2件の殺人事件が発生する。

 

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 大規模のマンション(タワマン?)の高層階用エレベーターで住人の射殺体が見つかった。低層階には一般庶民、高層階には富豪・有名人が住んでいる「格差マンション」で、被害者は低層階の住人だったからなぜ高層階用エレベーターに乗ったかが最初の謎である。

 

 また、付近のホテルで重大な裁判に出廷予定の証人が刺殺されていた。証人保護プログラムで守られていたはずなのに、密室状態で殺されてしまったのだ。入り口は警官が見張っていたので、バスルームの窓から敏捷な小人でも入ってきたのかと思われたが、暴風雪の中で出来たのかと言う疑問が残る。

 

 凶器は.22口径の拳銃と飛び出しナイフ、現場のエレベーターとバスルームには、CSIが真空掃除機まで持ち込んであらゆる「証拠品」を採取する。死体の検視、タワマン住人の尋問、重大な裁判の被疑者・弁護士に対する事情聴取と、正道を踏んだ捜査が続くが、全てはスピーディで300ページはあっという間に読み進んでしまった。

 

 CSIという人気ドラマを背景にした制約もあっただろうが、練達の作者にかかるとスマートなミステリーに仕上がっています。うーん、僕の大好きなNCISのノベライゼーションも誰かやってくれませんかね。