新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ロシアとの欧州一長い国境

 ロシアのウクライナ侵攻目的は「NATO拡大阻止」だったはずだが、意に反して中立を保っていたフィンランドスウェーデンNATO入りを促すことになりそうだ。欧州でロシアと一番長い国境線を接しているのがフィンランドロシア革命以前は、ロシアの支配下にある自治大公国だった。

 

 第二次世界大戦初期にはソ連との激戦(冬戦争)をし、終盤ではナチスドイツとも戦った。現在も人口550万人の小国でありながら、確固とした軍事力を持っている。女性も含めて兵役があり、18~60歳の男性は祖国防衛の義務を負っている。実質的に100万人近い動員力があるという。

 

 2019年発表の本書は、フィンランド人の夫君を持ち日本とフィンランドで子育てをした経験のあるヘルシンキ大の岩竹美加子教授が、両国の教育制度について比較したもの。フィンランドは、帯にあるようにテストも偏差値も受験もないのに、PISA(15歳時の学習到達度国際比較)で世界一の成績を収める国だ。なぜそうなるかと言うと、

 

        

 

・子供の人権を第一義とした教育コンセプト

・知識の詰込みではなく、生きるための考え方を学ぶ

・子供が自分で(自分に合った)カリキュラムを選択できる

・選択科目次第だが、授業のコマ数は日本の半分程度

・保育園から大学院まで、教育費は無料

・制服、校則、部活動などは強制ゼロ

・大学院には授業はなく、論文をまとめるのが仕事

 

  筆者のお子さん(男の子)は、日本とフィンランドで初等中等教育を受けた。筆者も親として両方の国の教育を見たのだが、フィンランドの学校は日本のようなストレスが(親も子供も)全くないという。日本では、やれPTAだ、運動会だ、入学式だと親も含めて拘束時間が多く、規則が細かい。これでは自由意志の発達(自ら考え決める事)が不十分になり、言われたことしかできない大人になってしまうという。

 

 強国ロシアに接しているせいもあって、フィンランド人の愛国心・克己心は非常に強い。確か「シッス」という自律の精神があって、冬戦争では圧倒的なソ連軍を相手に善戦している。その精神は、このようなシンプルな教育プロセスで育まれるのだろう。

 

 この国の教育制度は、大いに参考になると思います。「こども家庭庁」ではこの方向の教育改革をお願いしたいです。親のストレスが減れば、少子化対策になるのも間違いないのですから。