1980年発表の本書は、リチャード・ホイトのデビュー作。作者はオレゴン州生まれ、ハードボイルド小説好きで陸軍情報部からハワイでのジャーナリスト家業を経て、作家デビューした。この経歴は、本書の主人公ジョン・デンスンと一致している。デンスンはシアトルで私立探偵業を営んでいるのだが、殴り合いも格闘もまるでダメ、拳銃も持っていない。ただ情報部上がりだけあって、人物観察に優れ悪党や捜査官の行動様式は熟知している。
ある日デンスンのところへ、妙齢の美人女私立探偵パミラがやってくる。売春組織の長だった男が、一人の女を不具にし三人を殺したという。その男がデンスンの故郷の町に潜んでいるから、2人で恋人を装って探りに行ってくれと言うのが依頼内容。故郷の両親にもウソをつくことになるが、とりあえず引き受けたデンスンは、パミラが隠し事をしているように感じる。

実家の両親は喜んでくれたのだが、容疑者の大男ジェリーが隣家の幼馴染リンダの夫に収まっていたのにデンスンは驚く。ジェリーはリンダに暴力を振るい、双子の妹リーアンの居所を探ろうとしていた。シアトルの大学を卒業したリーアンは行方不明、そのリーアンの友人と思しき女サリーが町にやってくるのだが、デンスン・パミラと話し合った直後に殺されてしまう。
事件解決のキーワードは<囮・花・チャイナ>。.357マグナムを振り回す乱暴者ジェリーに対し、パミラたち美女を守ろうと立ち上がるデンスンだが、いつものされてしまいパメラに助けられる始末。サム・スペードになれなかったわけだ。しかし探り回るうち、ジェリーがカナダから何かを密輸しようとしていることは分かる。
やはり密輸事件を追っているらしいFBIの連中を、デンスン・パミラが捲くシーンがリアルだ。腕っ節はダメだが、FBIごときの尾行はたちまち見抜き、出し抜いてしまう。デンスンはスーパーマーケットにも足を運び、カリフラワーやサーモンを買ってパミラをもてなしたりする。カリフラワーはナマでかじるのが好き。
心優しき私立探偵というとマイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンを思い出すが、デンスンはもう少しスマート。でも見栄は張るので、いつも酷い目に遭ってしまう。解説は「ソフトボイルド探偵」と評していますが、心意気は立派なハードボイルド探偵だと思いますよ、デンスンさん。