2024年発表の本書は、佐々木孝博元海将補の「軍艦の歴史」。筆者は防衛大学校時代に師事した野村實氏の「海戦史に学ぶ*1」を継ぐものとして本書を書いたと思われる。1852年ペリー来航以来、海に支配者がどう変遷してきたかの歴史である。
WWⅡまでの軍艦については、多くの書籍を紹介しているので省略するとして、冷戦期、ポスト冷戦期から現代、ウクライナ戦争に見られる近未来の海洋軍事力の3章について紹介する。
WWⅡが終わり、世界の海に展開できる戦力を持てたのは米国だけである。その主力は空母機動部隊で、大型のジェット戦闘攻撃機をはじめ100機近くを搭載し、10万トンを越える大きさになった原子力空母が中心である。他に戦略核ミサイルを搭載した原潜、ミサイルを防ぐためのイージス艦などが配備された。

ソ連海軍がこれに挑むものの及ばず、英仏の国力では限定的な戦力しか持てない。今は中国海軍が台頭して、西太平洋で米国に対し接近阻止/領域拒否(A2/AD)戦略が可能な戦力を整備しつつある。
現時点では、軍用機だけでなく艦艇もステルス性能を持ち始め、戦術も大きく変化した。また中国に加えインド海軍の拡張も進み、潜水艦戦力を整備しているロシア、最低限の戦力を維持しようとする英仏、目覚めた日本の海上自衛隊も存在感がある。
しかし時代は、無人機・無人艦・AI兵器のものになりつつある。米軍はかねて有人ビークルと無人ビークルを組み合わせた「モザイク戦略」を研究していたが、ウクライナ戦争でその効果を目の当たりにしている。空中ドローン(UAV*2)水上ドローン(USV)水中ドローン(UUV)が、かつての主力艦を襲っている。多機能かつ高度な自律性を備えた強いAIが、ドローンの戦力を高めている。
本格的な空母機動部隊を持っているのは米国だけ、追っているのは中国、ひょっとしてインド。でも、その他の国の有人艦艇は小型化してゆき、主力はドローンになるように思えます。
*2:Unmanned Aerial / Surface / Underwater Vehicle