2020年発表の本書は、自ら「選挙マニア」と称する宮澤暁氏の、選挙面白事件簿。日本の第二次世界大戦後の9つの、主に地方選挙で起きた珍事を集めたものだ。珍事と言ったが、基本的には公職選挙法違反、もしくは違反か否かのグレーゾーンの話だ。
総じて有権者が少なく、議会ならば定数も少ないところで事件が起きやすい。定数18のところに19名の立候補者がいれば「ひとり辞めてくれれば面倒な選挙をしなくて済む」と思うのは、ある程度理解できる。現に熱海市議会は、定数16の無投票当選だった次の選挙で候補者17になり、議員さんの顔色が変わった。本書に紹介された事件では、立候補取り下げのために現ナマが飛んだり、助役のポストを約束するような工作があった。

知事選に多数の泡沫候補を立候補させ、対立候補の活動妨害や、悪口・ほめ殺しなどをさせる手口も紹介されている。カネがあれば、こういう工作をする泡沫候補をぶつけて、相手を潰すこともできるのだ。
有権者側にも工作が可能だ。選挙の3ヵ月前に転入していれば選挙権があるので、有権者を引き込んだ例がある。例えばオウムの麻原候補は、衆院選に立候補した東京4区に信者の住民票を移している。定常的に選挙の前になると人口が増え、終わると即減る村もある。各種の違反は、稼げる産業が少なく選挙で勝った方が少しでもいいポジションを占められる郡部に多いようだ。
東京都の200人ほどの村、青ヶ島村の話も興味深かった。戦後10年程、選挙ができなくて、村民には選挙権が事実上なかったのだ。先日総務省の人と電子行政の話をしていて「青ヶ島村の電子自治体、どうやって運用・メンテ・セキュリティできますかね」と話し合っていたから、むべなるかなと思う。
離島だから一日早い投票日・・・などの制約は、選挙DXで解消できます。問題はやはり硬直した制度設計にありますね。いつになったら電子投票できることやら。