新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

社会派ミステリー

百億円の身代金、紙幣で1トン余

本書は、寡作家天藤真が1979年に日本推理作家協会賞を受賞した傑作。今日「敬老の日」にふさわしい、紀州の大地主柳川とし子(82歳)が誘拐された事件の顛末である。なぜふさわしいかというと、このおばあさんは誘拐されたにも関わらず、犯人たちを手玉に取…

レンジャー部隊バン・ショウ軍曹登場

2015年発表の本書は、シアトル生まれのグレン・エリック・ハミルトンのデビュー作。アンソニー賞ほか3つの最優秀新人賞を獲得した作品で、書評では「初球ホームランだ」などの賛辞が目立つ。確かに500ページほどの長さを感じさせない、スピーディな展開と工…

日本版CSI番組の劇場版

本書は、TV朝日・東映系ですでにシーズン22まで続いている科学捜査ドラマ「科捜研の女」の、劇場版のノベライゼーション。映画(科捜研の女~劇場版)は2020年のシーズン20の最終回で制作が発表され、一昨年封切られている。 何作か紹介しているが米国CBS系…

4人の素人探偵たち

2002年発表の本書は、いくつも作品を紹介してきたポーラ・ゴズリングの、僕の本棚に残っている最後の1冊。最初シチュエーションの異なる作品を立て続けに発表してきた作者も、ある時点から五大湖沿岸の町ブラックウォーター・ベイと近くの街グランサムを舞…

全共闘時代、東大仏文科の3人

本書は、1995年の乱歩賞&直木賞を同時受賞した藤原伊織の作品。同作者の別作品によるW受賞はあるものの、同一作品としては史上初のものである。作者は本書の主人公たちと同じ東大仏文科卒、電通勤務時代に「踊りつかれて」(1977年)と「ダックスフントの…

浅見刑事局長、防衛産業不正に挑む

本書は、多作家内田康夫の「浅見光彦もの」。1998~99年にかけて<文芸春秋>に連載されたもの。いつもは光彦の厳しいお目付け役ながら、ちょっとしか出番のない兄浅見陽一郎刑事局長が大活躍する。 美しい利尻富士や美味しいウニなどの観光資源を持つ利尻島…

ジャズとお祭りの町

このDVDは、NCISの2つ目のスピンアウト「NCISニューオリンズ」のシーズン1。以前紹介した本家のシーズン11に、ニューオリンズを舞台にした2話が含まれていた。この支局のボスは、スコット・バクラ演じる”King”ことプライド捜査官、警官上がりのラサール捜…

地方伝承・旅情・地図

本書は巨匠松本清張の1968年の作品。「宝石」に2年半の間連載されていたもので、作者はこの期間、後に単行本化された長編だけでも少なくとも6本の連載を持っていた。後年の作家内田康夫が「連載が始まった時点では、犯人が誰かは私にもわかりません」と言…

分析官ビショップ登場

このDVDは「NCIS:ネイビー犯罪捜査班」のシーズン11。統計によると全米TVドラマランキングで年間1位を最初に取ったのがシーズン10、その勢いを駆ってよりスケールアップした内容になっている。前シーズンでモサド局長だった父イーライを亡くしたジヴァが、…

70年代の本格社会派ミステリー

先日「当代一流の読み手」佐野洋の、一風変わった連作短編集「検察審査会の午後」を紹介したが、本書は正々堂々作者の代表的な本格長編ミステリー。1970年の発表で、よくある雑誌等への連載ではなく<カッパ・ノベルズ>への書き下ろしである。それゆえ全編…

法は弱者を叩くためのもの

本書(2018年発表)は、自身もユタ州の検察官・弁護士であるヴィクター・メソスのリーガル・サスペンス。ユタ州は中西部の南部よりの州で、2018年になっても黒人の人種差別が顕著なところだ。主人公のダニエル・ローリンズは、30歳代後半バツイチのお人よし…

困った父親たち

このDVDは、ご存じ「ネイビー犯罪捜査班:NCIS」のシーズン10。このころの作品は、海外出張を一杯したフライト上でよく見ていたものだ。10年近く前のことなのに、いくつかのシーンを覚えている。 それを今回、全編を通してみることで、個別のエピソードだけ…

日本の新本格1965

1965年発表の本書は、高木彬光の「検事霧島三郎」シリーズの第三作。1948年「刺青殺人事件」でデビューした作者のレギュラー探偵は、天才神津恭介だった。初期の神津シリーズは、ある意味米英の「探偵小説」を基にしたもの。しかしデビューから20年近く経っ…

英国紳士流のアイロニー

本書は、以前デビュー作「百万ドルを取り返せ」を紹介したストーリーテラー、ジェフリー・アーチャーの短編集。デビュー作以下、多くの長編サスペンスを発表している作者だが、意外なことに短編集は1980年に発表された本書だけらしい。作者はオックスフォー…

ファンのためのギブスの物語

このDVDは、ご存じ「ネイビー犯罪捜査班:NCIS」のシーズン9。この中の14作目「運命の分かれ道」で通算200話を達成している。記念すべき200話は「ファンのためのギブスの物語」と位置付けられ、シーズン1からずっと主役を続けてきたギブス捜査官(マーク・…

2時間ドラマから映画へ

本書は、TV朝日の人気ドラマ「相棒」の最初の映画脚本をノベライズしたもの。2008年公開の映画で、脚本は戸田山雅史、ノベライズは司城志朗。2時間ドラマでスタートしたこのシリーズ、今はシーズン21を放映中である。映画も、スピンアウト2作(鑑識米沢守…

「一日内閣」を狙ったテロ

昨日に引き続き、本書も西村京太郎の「十津川警部もの」。1999年に発表されたものだ。初期の頃の趣向を凝らした作品群と違い、このころの作品は2時間ドラマの脚本のようになった印象を持っている(大家に対して誠に失礼ながら)。 昨日の「特急北斗1号殺人…

流氷の海で死にたい

1987年発表の本書は、トラベルミステリー作家として名高い西村京太郎中期の作品。昨年「華麗なる誘拐」「D機関情報」と初期の作品を紹介してきた。1作ごとに大掛かりな仕掛けをした作品群で、ミステリーという枠を大きく広げたものと捉えている。それに比…

「殺さないで!」と出演者の悲鳴

このDVDは、ご存じ「ネイビー犯罪捜査班:NCIS」のシーズン8。シーズン6あたりから、メンバーの過去や家族を交えたエピソードが増えているが、それ以上にアクションやストーリーの規模は大きくなっている。また、これまで出演した登場人物が再度・再々度出…

ヴォージュ広場1943~1993

本書は日本人の夫君を持ちカリフォルニア在住だというカレン・ブラックと、彼女が生み出したパリのセキュリティコンサルタント、エメ・ルデュックのデビュー作。上智大に学びP・D・ジェイムズの影響を受けたという作者が選んだ舞台は、なぜかパリ。サン・ルイ…

環境&福祉問題の解決策だったが

1988年発表の本書は、シャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」の第7作。ついに子供が授かったセーラとマックスの夫妻だが、相変わらずケリング一族はお騒がせを続けている。今回の中心になるのは第2作「下宿人が死んでいく」で出会って結婚し…

伸介登場前の社会派ミステリー

1979年発表の本書は、アリバイ崩しの巨匠津村秀介のデビュー第三作。第五作「山陰殺人事件」で登場するレギュラー探偵浦上伸介の前には、作者は所轄の警官を探偵役に社会派ミステリーを書いていた。作者が<週刊新潮>で<黒い報告書>を連載していた事件記…

在デリー高等弁務官の死

1984年発表の本書は、英国推理作家協会(CWA)賞新人賞受賞作。作者のエリザベス・アイアンサイドは英国生まれで、欧州各地やインドを巡り歩いたと解説にある。今や人口で中国を抜く大国インドだが、その国土の広さも半端ではない。作者がインドで暮らした3…

黒江壮の実家の街

本書はいくつも紹介した、深谷忠記の「壮&美緒シリーズ」の中期(1992年発表)の作品。後にようやく壮が36歳の准教授の時に二人は結婚するのだが、この時点ではまだ29歳。婚約した二人は、初めて壮の実家を訪れる。場所は山口県の萩市、言わずと知れた長州…

選挙と建設業界の深い闇

1990年発表の本書は、久しぶりの「V・I・ウォーショースキーもの」。シカゴの女探偵V・Iことヴィクの正義感あふれるゆえの苦闘を、イリノイ州在住の作家サラ・パレツキーが書き続ける第6作である。毎回背景となる舞台を変えているこの作品群、今回の舞台は建設…

金沢・東京「二重生活」の夫

本書は1959年に発表された、巨匠松本清張の代表作である。物語の大半を占める金沢を中心とした石川県の冬の風情が、陰鬱な雰囲気を倍増させている。26歳のOL禎子は、勧める人があって10歳年上の鵜原憲一と見合いをし、結婚した。当時としてはお互い、やや遅…

ホープ弁護士登場

多くのペンネームを持ち、多様な物語を発表した才人エド・マクベイン。もちろん有名なのは「87分署シリーズ」なのだが、そのほかにも本書(1976年発表)に始まる「ホープ弁護士シリーズ」をこの名義で何冊か発表している。舞台は、大都会を遠く離れたフロリ…

オレンジ郡のシングルマザー巡査部長

T・ジェファーソン・パーカーという作者の作品を読むのは、初めて。巻末の解説によると2002年の「サイレント・ジョー」と2004年の「カリフォルニア・ガール」で2度米国探偵作家クラブ最優秀長編賞を獲った実力派だ。1年に1作程度という現代作家としては寡…

喜歌劇「魔法使い」の陰で

1985年発表の本書は、シャーロット・マクラウドの「セーラ&マックスもの」の第6作。前作「消えた鱈」では、ようやく新婚気分も落ち着いたところでセーラとマックス夫婦が純銀製の鱈を巡る事件に巻き込まれる。セーラはあまたある伯父叔母のなかでも特にう…

分銅鎖が得意な目明し

5大捕物帳の他にも、日本特有の歴史ミステリー「捕物帳」は存在する。捕物帳というのは、与力・同心が目明したちの報告を受けて奉行などに報告するために書きつけておくメモのようなものだ。実際、市井のことに詳しくない御家人では市中の犯罪捜査は難しい…