峰隆一郎という作家は、時代(剣豪)小説家だと思っていた。確かに120冊を超える時代小説を執筆している。しかし、アリバイ崩しを中心に50冊近いミステリーも書いている。食わず嫌いもいけないので、初めて買ってきたのが本書。1988年発表と比較的初期の作品である。
小銭亨は司法試験浪人中の青年、すでに8回受験に失敗し、同級生ながらすでに弁護士事務所勤めをしている涼子の勧めで、彼女の弁護事務所でアルバイトをしている。涼子は富豪の娘で、亨はしがないサラリーマンの息子。世の中は不公平だ。
ところが、やはり大学法学部の同期で、司法試験をあきらめ警官になっていた平栗から連絡が入った。寝台特急「さくら」の車中で亨の父親徳次が死んだというのだ。死因は蛇毒だったが、平栗は2つの傷の間隔が広すぎるので蛇に嚙まれたのではなく、注射器で2度刺されたのではないかという。

涼子にカネを出してもらい、亨は平栗と捜査を始める。カネがない父親が、なぜか大金が入ると思っていたらしい。実は徳次は交通事故を目撃していて、逃げた車の持ち主を脅そうとしていたのだ。寝台列車で同室だった老婦人から事情を聴くと、もう一人同室だった若い美女が、途中の京都駅で入れ替わったような気がするという。
その美女赤座加津子を突き止めた平栗たちは、彼女を囮に使って真犯人を呼びよせようとするが、彼女も「さくら」のA寝台から消え、やがて井の頭公園の池で射殺体となって見つかる。さらに国会議員秘書の百木という男も「さくら」の寝台で、蛇毒で殺されてしまい。有力な容疑者として、その議員の息子と恋人が浮かび上がる。
3度の殺しの時に、容疑者の女は「さくら」に乗れたのか?長崎・佐世保と東京間は18時間ほどかかり、新幹線も並走しているし、途中下車駅に近い空港はあまたある。
アリバイトリックは面白かったのですが、結末は(二重三重に)意外なものでした。不思議な作風ですね。もう数冊読んでみないと、評価が難しいです。