新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

脅威=手段✕機会✕目的✕動機

2021年発表の本書は、何度かご紹介している元外交官宮家邦彦氏の近著。氏の論説や「朝までナマTV」などでの発言には重みを感じているのだが、本書は飛び切りのインテリジェンス教本である。現在の日本が直面する最大のリスクは、台湾有事と考えてもいいだろ…

航空戦力強化のトライアル

第二次世界大戦は、戦略的には「空の闘い」だった。陸上・海上を問わず、制空権なき側は必ず敗れた。膨大な記録も残されていて、僕らは ・戦闘機 零戦、Bf109、Fw190、F6F、P51、スピットファイア ・爆撃機 一式陸攻、Ju87、Ju88、B17、B25、B29、アブロラン…

古来からの経営リスクマネジメント

昨日「会社を危機から守る25の鉄則」で経営リスクマネジメントの考え方を紹介した。本書はそれよりずっと古い、1974年発表の素人向けの法律書。著者は「赤カブ検事もの」などで知られる和久峻三氏である。以前紹介した1992年発表の「商法面白事典」に先だっ…

経営リスクのチェックリスト

日頃、商売として「サイバーセキュリティは経営課題ですよ」と訴えている。2014年発表の本書は、そんな商売でお付き合いもある<西村あさひ法律事務所>の弁護士たちが得意分野の「経営リスク」を語ったもの。国際関係にも強く海外の主要都市にも事務所があ…

ドイツの巨砲を破壊せよ

1957年発表の本書は、冒険作家アリステア・マクリーンの第二作。デビュー作「女王陛下のユリシーズ号」は、北海での英国海軍軽巡洋艦の闘いと死を描いたものだったが、今回の舞台はエーゲ海。トルコに近い架空の島ナヴァロンでの、連合国軍人の破壊工作行が…

5G、それで何ができるのか?

2020年発表の本書は、東京大学大学院教授(電子工学)森川博之氏の「5G論」。僕より1世代若いデジタル研究者で、政府関係の会合等で何度かお会いしたこともある。技術者だがビジネス感覚もお持ちで、この技術をどう高めるかよりどう使って社会に適用する…

日本人をだますのは簡単

2021年発表の本書は、昨年「日本人は何も知らない」を2冊紹介した「めいろまさん」こと谷本真由美氏のシリーズVol.3。前作では「COVID-19」禍における各国の対応を含めて、日本メディアが伝えていない海外事情を紹介してくれた。本書では、欧州事情を中心に…

ライン河の対岸の城

1931年発表の本書は、怪奇&密室ミステリーの大家ジョン・ディクスン・カーの初期の作品。以前紹介した「夜歩く」「絞首台の謎」に次ぐ第三作で、前2作同様パリの予審判事アンリ・バンコランが探偵役を務める。ただ彼は、それほど売れた探偵ではない。 中世…

放送法行政文書事件の背景(後編)

日本で独立機関がテレビ局を監視できる体制にないのは、多くのテレビ局が新聞社の系列である(クロスオーナーシップ)ためだ。独立機関による監視は、政治だけではなく他のメディアからの独立もテレビ局に要求する。これは今の日本では難しい。 昨日はテレビ…

放送法行政文書事件の背景(前編)

安倍元総理が凶弾に倒れて以降、いろいろなことが噴き出してきている。今は総務省のリークだろう、放送法についての行政文書が明るみに出て、当時の高市総務大臣や磯崎首相補佐官への非難が高まっている。その関連で2冊の書籍を見つけることができたので、…

スコットランドの6人の画家

本書(1931年発表)はドロシー・L・セイヤーズの「ピーター・ウィムジー卿もの」の第六作。原題の「Red Herrings」は燻製のニシンのことだが、ここではミスディレクションを差す。軍用犬などの追跡を逃れるため、匂いの強い燻製ニシンを使って逃走路を欺瞞した…

法人検死報告書(コロナ編)

本書は、以前「あの会社はこうして潰れた」を紹介した、帝国データバンク情報部による「COVID-19」禍における倒産状況分析の続編。2021年5月の出版で、おおむね2020年度の倒産劇を扱っている。 実は「COVID-19」対策として政府が数々の支援策を出していて、…

技術革命だけでは人類を変えきれない

2017年発表の本書は、5人の知の巨人にサイエンスライターの吉成真由美氏がインタビューしたまとめたもの。昨日紹介した「知の逆転」の後日談とも言え、テーマは「人類とテクノロジーの関係」である。登場する巨人は、 ノーム・チョムスキー(数学・言語学・…

限りなく真実を求めて

2012年発表の本書は、当代最大の(理系)知性を持った巨人6人へのインタビューをまとめたもの。インタビュアーはサイエンスライター吉成真由美氏である。その巨人たちとは、 ■ジャレド・ダイアモンド(UCLA教授) 生物学者でピューリッツア賞受賞者「文明は…

市民参加の司法・・・の舞台裏

自身はさほどの多作家でもないが、ミステリーの厳正さにかけては人後に落ちない作家佐野洋。評論家は彼を、「当代一流の読み手」と称する。そんな作者の研究熱心さが顕れたのが、長編でも短篇集でもなく「連作推理小説」という本書(1995年発表)である。 最…

貴族探偵ホーン・フィッシャー

1922年発表の本書は「ブラウン神父シリーズ」などで知られたG・K・チェスタトンの短編集。ブラウン神父は逆説と皮肉に満ちたユニークな探偵で、シャーロック・ホームズのライヴァルたちに数えられることもあるのだが、全く次元の違った物語である。ホームズが…

警官の父親を殺した容疑者

エド・マクベインの大河ドラマ「87分署シリーズ」は、1956年から約50年間書き継がれた。前回1990年発表の「晩課」を紹介したが、本書はその次の作品(1991年発表)。1990年代後半以降の作品は手に入っておらず、本棚の残りも少なくなった。本書では、9作目…

コミュニケーションが苦手な日本人へ

2017年発表の本書は、経済学者暉峻淑子(てるおかいつこ)氏のコミュニケーションを基軸に据えた社会論。冒頭「対話が続いているうちは、殴り合いは起きない」というドイツ人の言葉が紹介されている。これは真実で、 ・誘拐やたてこもり事件でも交渉している…

日本の新本格1965

1965年発表の本書は、高木彬光の「検事霧島三郎」シリーズの第三作。1948年「刺青殺人事件」でデビューした作者のレギュラー探偵は、天才神津恭介だった。初期の神津シリーズは、ある意味米英の「探偵小説」を基にしたもの。しかしデビューから20年近く経っ…

アベ政治とは何だったのか

2021年発表の本書は、菅政権末期の同年8月前後に「自民党」を長く見てきた8名の関係者・有識者に宝島社がインタビューした結果をまとめたもの。安倍・菅政権の9年間に批判的な人ばかりで、政権の功罪というよりは「罪」ばかりを取り上げた内容となってい…

再生可能エネルギーへの転換

本書は3・11東日本大震災と、それに続く福島第一原発(F1)事故当時、総理大臣を務めていた菅直人議員(立憲民主党)が2021年に発表されたもの。昨年「東電福島原発事故、総理大臣として考えたこと」を紹介しているが「これも読んで」と送ってもらった。 世界…

勇気は出るけど、蛮勇かも

昨日別ブログで、ニューオータニでの「正論大賞授賞式」に参加したことを書いた。僕が早々に引き揚げてから、岸田総理もお出でになったらしい。なかなか政治力のある月刊誌ということだ。その時、引き出物としてもらったのが本書。大賞受賞の織田元空将と、…

心中事件に3発の銃声

1949年発表の本書は、A・A・フェアの「バーサ・クール&ドナルド・ラムもの」の1冊。本書も訳者が田中小実昌氏(通称コミさん)で、なかなか味のある訳文になっている。<おれ>ことラム君は、腕っ節はからきしだが「抜け目のない羊」としての才覚を発揮し、…

狂乱経済・社会の是正はなるか

今日3/8は「国際女性デイ」、中国の通販サイト等では11/11(独身の日)と並ぶ「女王節」の書き入れ時である。2022年発表の本書は、中国通のジャーナリスト青樹明子氏の現代中国経済レポート。習大人が、巨大ITを叩き、教育改革と称して塾などを潰し、有名俳…

南北統一への夢と現実

2020年発表の本書は、東大名誉教授(政治学)姜尚中氏の東アジア展望。政権批判番組「サンデーモーニング」のコメンテーターである筆者は、僕には日本政府批判の急先鋒に見える。同番組で、福島原発処理水のことを「汚染水」と言うのは、筆者と青木理氏の2…

賤民長屋の探偵団

都筑道夫という作家は非常に作風の広い人で、本書のような時代推理ものから現代もの、SFに至るまで多くの小説を残した。その大半は短編もしくはショートショートで、いずれも皮肉なユーモアが感じられる。ペンネームも10くらいはあり、シリーズものも多い。…

書きたい放題書いてみた

2018年英国で発表された本書は翌年日本でも出版され、早々にBook-offの100円コーナーに並ぶスピード感である。読み始めて驚いたのは、「・・・」という会話を表わすカギカッコが一つもないこと。確かにおれことジャック・プライスの独白が9割を占める小説なの…

日本はその時何ができるか

以前、台湾有事にあたっての米中戦争シミュレーション、渡部元陸自総監著「米中戦争~その時日本は」を紹介した。2017年出版とやや古い書だったが、作戦級のシミュレーションとしては充分勉強になった。 Air Sea Battle(ASB)はどう展開する? - 新城彰の本…

懐かしいジュブナイル

日本の「SF御三家」といえば、小松左京・星新一と本書の作者筒井康隆を指す。あまりSFを読まなかった学生時代の僕だが、小松左京のハードでシリアスなSFは嫌いではなかった。星新一のショートショートは、正直何が書いてあるのかわからずほとんど読んでいな…

キンジーの新しい「職場」

本書はご存じ、Aから順番にタイトルを付けていくスー・グラフトンの「キンジー・ミルホーンもの」の第9作。30歳代の女私立探偵で主人公にした人気シリーズとしては、サラ・パレツキーの「VICもの」があるが、これがどんどん長編化してついには上下巻になる…