2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧
本書は、かつて探偵小説ベスト10を選べば、必ず入っていた伝説の不可能犯罪ミステリーである。作者は、以前「オペラ座の怪人」を紹介した新聞記者出身の作家ガストン・ルルー。1907年の発表で、それまであった「密室もの」が完全な密室ではなかったことを指…
G7広島サミットには韓国の尹大統領も参加、西側への親密ぶりを示した。ひょっとするとだが、来年はG8の一国になっているかもしれない。前政権でまったく途絶えていた、日韓の協力も再開すすだろう。その中にはインテリジェンスに関するものもあって欲しいと…
本書は元国税調査官で経営コンサルタントの大村大次郎氏が、2005年に発表したもの。少し古い書で、今では改善されていることもあるかもしれないが、日本の税制や税務当局の限界を含め、脱税に関する情報を満載した「脱税ゼミナール」のようなものだ。冒頭筆…
本書は以前「青いチョークの男」を紹介した、フランスのミステリー作家フレッド・ヴァルガスの四作目。「青い・・・」の主人公はパリ5区の警察署長だったが、本書(1995年発表)に始まるシリーズでは3人+αのチームが探偵役を務める。その3人とは、 ・中世が…
以前日露戦争の陸の英雄秋山好古少将(当時)の伝記を紹介したが、本書はその10歳下の弟秋山真之少佐(当時)の伝記である。父親の引退と長男の体調不良によって、秋山家は貧しい暮らしをしていた。好古は任官して俸給の大半を実家に入れ、「淳(真之の幼名…
1997年、香港返還の年に発表された本書は、昨日「目黒警察署物語」を紹介した初代危機管理監佐々淳行氏の香港領事時代の記録(記憶?)。筆者は30歳前(当時警視)に領事として香港に赴任、現地で次男・三男が生まれている。赴任当時は「返還まで30年ある」…
1989年発表の本書は、初代内閣安全保障室長などを務めた危機管理の専門家佐々淳行氏の青春録。東大法学部を出て今の警察庁に入庁した筆者は、研修後目黒警察署に配属される。階級は警部補で、署長(警視)ら幹部から「君は三級職(キャリア)だから警部補だ…
2日続けてジョン・D・マクドナルドの作品を紹介した。本書(1962年発表)が、最後に本棚に残っていた作者の著作。本当は船に住む男「トラヴィス・マッギーもの」が読みたいのだが、なぜか手に入らない。「ケープ・フィアー」はサスペンスもの、「夜の終わり」…
昨日、ペーパーバックライター出身の作家ジョン・D・マクドナルドの初期の作品「ケープ・フィアー」を紹介した。米国では有名な作家なのだが、日本では知る人は少ない。本書(1960年発表)は中期の秀作で、創元社が最初に作者の作品を邦訳したものである。 冒…
本書の作者ジョン・D・マクドナルドは、ヨット住まいの探偵「トラヴィス・マッギーもの」始め、60冊以上の犯罪小説・スパイ小説などを書いた。本書の主人公サム・ボーデン弁護士同様、作者も第二次世界大戦中は軍人。CIAの前身であるOSSに所属していた陸軍中佐…
この本(2019年発表)を読んだきっかけは、遺伝子操作(GMO)食品規制はあるが、ゲノム編集食品についてはまだ規制はないと聞いたから。1990年代、米国で「腐らないトマト」が売り出されたが、GMO食品だったことから市場から追放されている。以後GMO食品に関…
創元推理文庫の<古代帆船>のマークは、怪奇冒険小説のジャンルを表している。僕としては、SFよりも苦手な分野で、ほとんど読んだことがない。それでも「ソロモン王の洞窟」シリーズで有名なこの作者ヘンリー・ライダー・ハガードの名前だけは知っていた。…
今日からG7広島サミットが始まる。ただ参加各国首脳は皆、内憂外患の中にある。特に初参加になる英国スナク首相は、厳しい政治環境に置かれている。ウクライナ紛争で情報戦や軍事支援で存在感を示すものの、英国の衰退は明確だ。国内は、財政不安・物価高騰…
先月、狙撃手だったコグリンとベテラン作家デイヴィスの共著「最強のガニー、スワンソン狙撃手もの」を3冊立て続けに紹介した。2018年発表の本書も、狙撃手だったニコラス・アーヴィングが、軍事アクション小説で実績あるA・J・テイタの助けを借りて発表した…
統一地方選挙が終わり、政界はしばしの休息に入った。岸田政権の黄金の3年間は、あと2年を残しているが、波乱要因がないわけではない。その一つが<政局の女王>ともあだ名される小池都知事。TV東京のWBS(*1)キャスターから、日本新党で政局入りし多くの…
先日「当代一流の読み手」佐野洋の、一風変わった連作短編集「検察審査会の午後」を紹介したが、本書は正々堂々作者の代表的な本格長編ミステリー。1970年の発表で、よくある雑誌等への連載ではなく<カッパ・ノベルズ>への書き下ろしである。それゆえ全編…
本書(2018年発表)は、自身もユタ州の検察官・弁護士であるヴィクター・メソスのリーガル・サスペンス。ユタ州は中西部の南部よりの州で、2018年になっても黒人の人種差別が顕著なところだ。主人公のダニエル・ローリンズは、30歳代後半バツイチのお人よし…
「刺青殺人事件」でデビューした高木彬光は、昨日短編集「5人の名探偵」で紹介したように、探偵役を使い分けていた。しかしその5人以外にも本書(1970年書き下ろし)が初登場になる、天才肌の名探偵墨野隴人がいる。本書の後、4作品に登場した彼は、実は・…
本書は光文社文庫の企画で、高木彬光が創造した5人の名探偵が登場する中短編を、各1作収めたもの。実はもう一人墨野隴人という探偵役がいるのだが、本書には収めてもらえなかったようだ。この探偵については「実は・・・」があるので、また別途ご紹介すること…
「本格の鬼」鮎川哲也は、大家ではあるが多作家ではない。生涯に長編小説は22編しか遺さなかった。作者の一番脂の乗り切っていた時期が、おそらく1960年前後。本書は、その1963年に発表されたもの。作者がよくやることだが、本書も前年に短編として発表され…
2021年発表の本書は、ジャーナリスト門田隆将氏の政治書。雑誌「Will」に2014~21年にかけて連載されてきた記事を中心に再構成したもの。著者については今年初めて読んだ「正論」等によく名前の出てくる人だが、著書を読むのは初めて。読んでみると、 勇気は…
2020年発表の本書は、知の巨人エマニュエル・トッド教授の近著。「シャルリとは誰か?」でフランスの危機に警鐘を鳴らした筆者が、先進国における民主主義の危機を取り上げた著だ。もともとグローバル化(Globalization)には反対の立場で、ヒトが自由往来す…
以前「殺人のすすめ」を紹介したレジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコー」ものは、英国では有名なシリーズ。英国の雑誌<ミリオン>が65名の推理作家にアンケートした「有名な探偵は?」の問いで、6位に入っている。7位がエルキュール・ポアロというか…
昨日「アメリカ大統領選、勝負の分かれ目」で、米国有権者の動向を紹介した。本書は直近(2022年)に発表された、政策や選挙にまつわるお金の話である。著者の渡瀬裕哉氏は、機関投資家やヘッジファンドなどの動向を研究するエコノミスト。本書を「米国を理…
2020年発表の本書は、日経新聞論説&編集委員である大石格氏の米国選挙事情レポート。トランプ再選なるかという同年秋の大統領選挙に向けて、選挙民がどう変わっているかと<ストラテジスト>と呼ばれる選挙参謀の仕事ぶりを紹介している。 選挙民そのものが…
1947年発表の本書は、「幻の女」などで高名なサスペンス作家ウィリアム・アイリッシュ(別名:コーネル・ウールリッチ)の作品。熱烈なファンの多い作家で、その哀愁を帯びたサスペンスは他の追随を許さないほどの「高み」にある。徹底して犯罪の中の男女の…
本書は、先日出張で行った時、名古屋栄の丸栄スカイルというショッピングビルにあるBookoffで購入したもの。古いエンタメ本だが、さすがに地元名古屋では見つかるものだと感心した。 1979年、ローカル局「名古屋TV」が放送したアニメ番組「機動戦士ガンダム…
以前「洞爺湖殺人事件」を紹介したが、本書(1992年発表)も津村秀介の「湖シリーズ」の1作品。これも長く手に入らなかったものだ。同シリーズの「浜名湖殺人事件」で犠牲者の娘として登場した女子大生前野美保が、本書では浦上伸介の相棒役に定着している…
本書は、国際政治学者藤原帰一教授の近著・・・と思って買ってきたら、2003年発表の書のリメイク(2022年出版)だった。しかし不思議なことに、論じられている国際情勢やイデオロギー対立、戦争と平和などは、現在にあてはめても十分意味がある。 冒頭、戦争に…
昨日金子教授の「人を救えない国」を紹介したが、問題意識は共有できるとして、地域分散革命が解決策と言われても、経済学ならともかく政治学上は困るなと思った。そこで手に取ったのが本書(2019年発表)、著者の佐々木信夫氏は中央大学名誉教授(行政学)…