変格ミステリー
普通のミステリーは、殺人のような重大事件があり、探偵役が登場して事件を調査し、最後に犯人(たち)を名指しないしは逮捕して終わる。Why、Howという謎もあるのだが、「WHO done it?」と言うのが主流。しかし本書(1946年発表)でデビューしたパトリシア…
エドワード・D・ホックは膨大な短編ミステリーを書いた。以前怪盗ニック・ヴェルヴェットのシリーズを紹介しているが、彼は依頼を受ければなんでも盗むのだが「価値のないもの」に限るという変わったビジネススタイルを貫いている。盗むのは例えば、古新聞・…
在宅勤務が続いていて、本の読み方も変わってきた。これまで半分以上のページは往復の新幹線車内か、近距離・遠距離を問わず移動中に読んでいる。もちろん欧米便のフライトの中ということもある。ところが移動時間というのがほとんど無くなってしまし、今はT…
パトリシア・マガーは本格手法での変格ミステリーを得意とした作家だと、以前紹介した。彼女は大学でジャーナリズムを専攻、道路建設協会の広告部勤務を経て「建設技術」という雑誌の編集を担当、戦後間もない1946年に「被害者を探せ」でデビューしている。…
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンクはユニバーサルTVのプロデューサー。コンビを組んでいくつものTVシリーズを書き、TVのオスカーである「エミー賞」の最優秀脚本賞を2度受賞している。彼らの脚本で日本で一番よく知られたのは「刑事コロンボ」だ…
ミステリーのカタログや裏表紙などに、簡単な内容紹介が載っている。これが、書籍を買うかどうかの判断材料になることは多い。本格ミステリー好きのNINJA青年は「xxミステリー100選」などという書評とともに、内容紹介文を見て購入する優先順位をつけてい…
ギルバート・キース・チェスタトンはイギリスの作家、詩人、批評家、随筆家である。1905年ころ長編ミステリー「木曜の男」を発表しているが、推理作家としての地歩を築いたのは「ブラウン神父」という、小柄でコウモリ傘に帽子とマント、丸顔であどけない神…
ミステリーの翻訳や評論をしている人が自分でもミステリーを書くというのは、珍しいことではない。以前ハードボイルド小説に詳しい小鷹信光の「探偵物語」を紹介したが、舞台は日本、登場人物は日本人になっていても、テイストはすっかりアメリカンハードボ…
新潮文庫版の「813」を読んで、ルパンものの最高傑作と言われるこの作品にさほどの評価ができなかったことは、以前に紹介した。その中で、フランス文学界の重鎮の方の翻訳だったのも評価できない一因ではないかと述べた。しかし、重鎮の方に忖度して新訳…
富裕な奥さんと結婚したため、一時は医学の道を歩みながらも医師になることなく金銭的には不自由なく暮らす中年男ティム。彼の悩みは、奥さんの不倫とその相手が親友のブレイゼスであること。一方世間のニュース、特に殺人のニュースを見ても組織犯罪による…
奇術とミステリーには共通点が多い。いずれも聴衆や読者をあっと言わせてナンボの世界だし、いたずら心がないと上手くいかない。クレイトン・ロースンなどは奇術師を探偵役にした、読者を驚かせる作品を多く残した。日本のロースンと言えば、泡坂妻夫以外に…
ABCショップというカフェの片隅で、ミルクをすすりチーズケーキをほおばる老人。カカシのように痩せた男だが丸眼鏡の奥の眼光は鋭く、興奮してくると少し震える指で紐に結び目をつくったりほどいたりする。「イブニングオブザーヴァー紙」の記者ポリー・バー…
パトリシア・マガーという作家は、あまり日本では知られていないかもしれないが、ユニークなミステリーを残した。1946年の「被害者を探せ」に始まり、初期の5作はおおよそ1年毎に発表されたが、各々独自の趣向を凝らしている。名作と言われるのは第二作「…
ミステリー界に短編の名手と言われる作家は多いが、本書の著者フレドリック・ブラウンはそのジャンルの広さが際立っている。膨大な作品で知られるアイザック・アシモフも本格ミステリー、サスペンスもの、SFと書き分けるが、ブラウンもこれに匹敵する。 本…
有名なサスペンス作家であるウィリアム・アイリッシュ(本名コーネル・ウールリッチ)の作品中、ベスト3と言われるのが「幻の女」「黒衣の花嫁」「暁の死線」であることは、以前にも紹介した。 本書は高校生の時に読んで、あまり「名作」とは思えなかった。…
三谷幸喜という人は才人である。何年か前「清須会議」という映画を見たが、あれだけの個性的な俳優/女優を有名な歴史上の人物にあてはめ、新解釈も加えながら組み立てたストーリーは出色だった。特に鈴木京香演じるお市の方の恐ろしさが印象深い。 彼が20年…
ミステリの一番の売りは "Who done it?" だと思う。不可能犯罪を暴く "How done it?" などもあるが、やはり「犯人はお前だ」というのが王道だ。巨匠エラリー・クイーンはデビュー2作目 "French Powder Mystery" で最後の1行で犯人の名前を言うというアクロ…
わたしが語るのは殺人事件の物語です。 わたしはその事件の探偵です。 そして証人です。 また被害者です。 さらに犯人です。 フランスミステリーの鬼才、セバスチャン・ジャプリゾ「シンデレラの罠」のキャッチコピーである。訳者は、作者は一人四役を意図し…
泡坂妻夫(本名厚川昌男のアナグラム)は、1976年本書で長編ミステリーのデビューを果たし、その後20編弱の長編小説と20冊ほどの短編集を残した。この人は作家デビュー以前から奇術の世界では有名な人である。奇術とミステリーには多くの共通項目があって、 …