1997年発表の本書は、先月「ボルチモア・ブルース」を紹介したローラ・リップマンの「テス・モナハンもの」の第二作。米国探偵作家クラブ賞などを複数受賞した話題作である。作者は現役新聞記者であり、テスも倒産した新聞社で記者をしていた設定。
DCにも近い街なのだが、ボルチモアはすっかり貧しくなっている。廃棄された工場、汚染された土壌や水。失業者も増えて沈滞した街に、実業家のウインクがプロスポーツを誘致するとブチ上げた。一部市民は熱狂するのだが、ウインクの財務状況に不安定なところがあり、何かウラがあるようだ。
ウインクを巡る疑惑を、<ビーコン・ライト紙>の記者ケヴィンとロジータが追っていた。しかし2人がとりまとめた記事は、根拠不十分と編集会議のボツにされてしまった。かつてケヴィンと同僚だったテスは、2人のグチを聞かされる。
ところが誰かが新聞社内のシステムに細工し、ボツになった記事が掲載されてしまった。激怒したウインク側は、新聞社を提訴する。新聞社は(まだ私立探偵免許はないが)新聞事情に詳しいテスを臨時に雇い、本件の事情を探れと依頼する。
テス自身は、大勢いる伯父/叔父の一人スパイクが自身が経営する酒場で殴られ、入院する事件にも巻き込まれていた。スパイクは闇カジノにも絡んでいたのだが、なぜか老グレイハウンドを飼っていた。ドッグレースに出ていた犬らしい。やむなく犬を引き取ったテスの周辺に、なぜか不穏な気配が流れる。ヤクザものの狙いは、どうもこの犬らしい。
街だけではなく新聞業界も斜陽、そんな中でなんとかのし上がろうとするロジータや生き残ろうとするケヴィン。テスは複雑な思いで彼らを見守る。そんな中、ウインクが不審な死を遂げ、ケヴィンたちに容疑がかかるのだが。
格差が広がる社会で、インターネットに圧される旧メディア。事件の背景は、非常にリアルでした。複数賞受賞は当然ですよね。第三作以降も読まないと。