新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

政治・経済書

昭和の因習を脱ぎ捨てよ

2022年発表の本書は、何冊か著書を紹介した成毛眞氏と実践的な経済(経営?)評論家冨山和彦氏の共著。今月のNHK日曜討論で、政府の新しい資本主義実現会議メンバーでもある冨山氏が、 「地域や労働現場の現実はこうだと言っても、官僚や大企業社長は理解し…

ゲゼルシャフトが残る日本

2022年発表の本書は、経済評論家加谷珪一氏の日本経済(社会)のそもそも論。筆者のWeb上の論説は時々参考にさせてもらっていて、論理的な思考のできる人だと思っている。書籍としては2年前に「貧乏国ニッポン」を紹介している。この書は日本が安い国になっ…

パンデミックは世界規模の実験場

2021年末発表の本書は、何冊か紹介しているジャーナリスト大野和基氏が世界の識者にインタビューした記事の集大成「世界の知性シリーズ」。元原稿は<Voice>誌に2021年3~12月に掲載されたものである。 「COVID-19」禍は、世界に大きなインパクトを与え、…

「女性初」を追求したジャンヌダルク

統一地方選挙が終わり、政界はしばしの休息に入った。岸田政権の黄金の3年間は、あと2年を残しているが、波乱要因がないわけではない。その一つが<政局の女王>ともあだ名される小池都知事。TV東京のWBS(*1)キャスターから、日本新党で政局入りし多くの…

中国・左派メディア・野党・官僚批判

2021年発表の本書は、ジャーナリスト門田隆将氏の政治書。雑誌「Will」に2014~21年にかけて連載されてきた記事を中心に再構成したもの。著者については今年初めて読んだ「正論」等によく名前の出てくる人だが、著書を読むのは初めて。読んでみると、 勇気は…

Globalization と Mondialisation

2020年発表の本書は、知の巨人エマニュエル・トッド教授の近著。「シャルリとは誰か?」でフランスの危機に警鐘を鳴らした筆者が、先進国における民主主義の危機を取り上げた著だ。もともとグローバル化(Globalization)には反対の立場で、ヒトが自由往来す…

お金の、お金による、お金のための

昨日「アメリカ大統領選、勝負の分かれ目」で、米国有権者の動向を紹介した。本書は直近(2022年)に発表された、政策や選挙にまつわるお金の話である。著者の渡瀬裕哉氏は、機関投資家やヘッジファンドなどの動向を研究するエコノミスト。本書を「米国を理…

米国有権者の変遷と選挙戦略

2020年発表の本書は、日経新聞論説&編集委員である大石格氏の米国選挙事情レポート。トランプ再選なるかという同年秋の大統領選挙に向けて、選挙民がどう変わっているかと<ストラテジスト>と呼ばれる選挙参謀の仕事ぶりを紹介している。 選挙民そのものが…

道州制+二都構想

昨日金子教授の「人を救えない国」を紹介したが、問題意識は共有できるとして、地域分散革命が解決策と言われても、経済学ならともかく政治学上は困るなと思った。そこで手に取ったのが本書(2019年発表)、著者の佐々木信夫氏は中央大学名誉教授(行政学)…

地域分散ネットワーク社会の提案

2021年発表の本書は、立教大学教授金子勝氏の日本再生のための経済・社会論。著者は慶應大教授時代にTV番組の常連コメンテータで、僕もよく勉強させてもらった。副題にあるように安倍・菅政権批判が中心だが、ではどうすればいいかの回答は「地域分散ネット…

いよいよ本物?改革政党

統一地方選挙後半戦と同時に行われた衆参5選挙区の補欠選挙は、自民党の4勝1敗となった。1敗は衆院和歌山、維新の会が議席を獲得した。立憲民主党は、1議席の獲得も成らなかった。ここにきて、維新の会が野党第一党になる予感が現実のものになりつつあ…

続・アべ政治とは何だったのか

先月「自民党失敗の本質」を紹介した。第二次安倍~菅政権の官邸主導政治の功罪に迫る、8名の関係者へのインタビュー本であった。 アベ政治とは何だったのか - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 本書(2021年発表)はほぼ同じ時期の官邸政治について、朝日新聞デ…

政治団体「オリーブの木」の主張

2020年発表の本書は、YouTuberで政治団体「オリーブの木」代表の黒川敦彦氏の主張をまとめたもの。この団体の指向は、反グローバリズム・反新自由主義だが、「れいわ新選組」などの左派とは違うようだ。モットーは「なんでもできるさ、ピープルパワーで!」…

21世紀の英知、21人の独白

2021年発表の本書は、読売新聞編集委員鶴原徹也氏が、2015年から2020年にかけて、世界の英知と言われる人物21人にインタビューしたもの。形式として、識者の独白集になっていて、編者は各独白の人物紹介と簡単なコメントを付けているだけ。 分量も統一されて…

外国人記者の25の「なぜ?」

2022年発表の本書は、何度か政治・経済書を紹介しているWebメディア<クーリエ・ジャポン>の記事を集めたもの。主に2021年に公開された記事が取り上げられている。今回のテーマは「外国人記者の日本についての疑問」である。例えば、 ・ハイテク国なのにFAX…

無意味な競争・・・なのでしょうか?

2022年発表の本書は、れいわ新選組の大石あきこ衆議院議員の、日本維新の会への挑戦状(告発状?)。NHK「日曜討論」などでも厳しい口調で政権与党や維新を責め立てる著者だが、その因縁は大阪府職員時代からのものらしい。 30歳の時、橋下知事が若手職員と…

「言論TV」の内容を集大成して

先日「正論大賞授賞式」でお見かけしたジャーナリスト櫻井よしこ氏は、10年あまりインターネット動画サイト「言論TV」のキャスターも務めている。本書は2021~22年にかけて、高市議員を招いて対談した内容を書籍化したもの(出版は2022年)。 高市議員は安倍…

人生100年時代への提言

2019年発表の本書は、経済学者野口悠紀雄教授の人生100年時代への提言。一時期「老後2,000万円問題」が大きく取り上げられていたが、日本の年金制度に問題が多いのは確かだ。筆者は「今のままでは年金の破綻は必至」という。だからといって、資産運用に頼る…

本当の「霞ヶ関改革」とは?

昨日紹介した「官邸は今日も間違える」が面白かったので、著者千正康裕氏のデビュー作(!)を探してみた。著者が2019年に厚労省を退官して、翌年に出版したものである。法律改正の担当だったり、関連して国会質問の対応などしていると、帯にあるように「7…

市民から離れた政策決定過程

2021年末発表の本書は、元官僚千正康裕氏の霞ヶ関&永田町改革案。著者は2001年に入省して18年間厚労省に在籍し、現在は独立してコンサル会社を経営する一方、政府機関の有識者会合や民間の政策活動にも貢献している。官僚主導から政治(官邸)主導へと政策…

古来からの経営リスクマネジメント

昨日「会社を危機から守る25の鉄則」で経営リスクマネジメントの考え方を紹介した。本書はそれよりずっと古い、1974年発表の素人向けの法律書。著者は「赤カブ検事もの」などで知られる和久峻三氏である。以前紹介した1992年発表の「商法面白事典」に先だっ…

経営リスクのチェックリスト

日頃、商売として「サイバーセキュリティは経営課題ですよ」と訴えている。2014年発表の本書は、そんな商売でお付き合いもある<西村あさひ法律事務所>の弁護士たちが得意分野の「経営リスク」を語ったもの。国際関係にも強く海外の主要都市にも事務所があ…

放送法行政文書事件の背景(後編)

日本で独立機関がテレビ局を監視できる体制にないのは、多くのテレビ局が新聞社の系列である(クロスオーナーシップ)ためだ。独立機関による監視は、政治だけではなく他のメディアからの独立もテレビ局に要求する。これは今の日本では難しい。 昨日はテレビ…

放送法行政文書事件の背景(前編)

安倍元総理が凶弾に倒れて以降、いろいろなことが噴き出してきている。今は総務省のリークだろう、放送法についての行政文書が明るみに出て、当時の高市総務大臣や磯崎首相補佐官への非難が高まっている。その関連で2冊の書籍を見つけることができたので、…

法人検死報告書(コロナ編)

本書は、以前「あの会社はこうして潰れた」を紹介した、帝国データバンク情報部による「COVID-19」禍における倒産状況分析の続編。2021年5月の出版で、おおむね2020年度の倒産劇を扱っている。 実は「COVID-19」対策として政府が数々の支援策を出していて、…

技術革命だけでは人類を変えきれない

2017年発表の本書は、5人の知の巨人にサイエンスライターの吉成真由美氏がインタビューしたまとめたもの。昨日紹介した「知の逆転」の後日談とも言え、テーマは「人類とテクノロジーの関係」である。登場する巨人は、 ノーム・チョムスキー(数学・言語学・…

限りなく真実を求めて

2012年発表の本書は、当代最大の(理系)知性を持った巨人6人へのインタビューをまとめたもの。インタビュアーはサイエンスライター吉成真由美氏である。その巨人たちとは、 ■ジャレド・ダイアモンド(UCLA教授) 生物学者でピューリッツア賞受賞者「文明は…

コミュニケーションが苦手な日本人へ

2017年発表の本書は、経済学者暉峻淑子(てるおかいつこ)氏のコミュニケーションを基軸に据えた社会論。冒頭「対話が続いているうちは、殴り合いは起きない」というドイツ人の言葉が紹介されている。これは真実で、 ・誘拐やたてこもり事件でも交渉している…

アベ政治とは何だったのか

2021年発表の本書は、菅政権末期の同年8月前後に「自民党」を長く見てきた8名の関係者・有識者に宝島社がインタビューした結果をまとめたもの。安倍・菅政権の9年間に批判的な人ばかりで、政権の功罪というよりは「罪」ばかりを取り上げた内容となってい…

再生可能エネルギーへの転換

本書は3・11東日本大震災と、それに続く福島第一原発(F1)事故当時、総理大臣を務めていた菅直人議員(立憲民主党)が2021年に発表されたもの。昨年「東電福島原発事故、総理大臣として考えたこと」を紹介しているが「これも読んで」と送ってもらった。 世界…