新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

政治・経済書

移民問題の地道な解決策

いわゆる「西側」欧米諸国を揺るがしているのは、殺到する移民・難民問題。ロシアが難民を意図してNATO諸国に送り込んで、政情不安を狙っているとも伝えられる。 もはや「兵器」と化した難民 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) 適度に広い海で大陸と…

問題の根源は「日本人の心」

2019年発表の本書は、雇用ジャーナリスト海老原嗣生氏の日本の年金制度論。少子高齢社会になって多くの人が不安を持つ年金問題は、実は日本人の心の問題(病?)だという。年金問題が大きく取り上げられる背景は、政治闘争によるもの。それをメディアが拡幅…

勇気をもって真実を語る

本書は、派閥も無くしてニュースに取り上げられることも少なくなったのに、未だに「次の総理は誰」アンケートで3本の指に入る自民党石破茂議員の近著。<デイリー新潮誌>に2021年2月から1年間にわたって連載したコラムを、1冊の本にまとめたもの。菅~…

本書の発表から1年半

本書は、以前「令和の国防」「歴史の教訓」を紹介した元外交官兼原信克氏の近著。2022年末の出版で、内容としては紹介した両著書をなぞるものとなっている。前2作はそれなりの関心を持って読んだのだが、今年初め「正論」の会合に出席して、僕自身ちょっと…

選挙特番・国会中継に映らないこと

「パリ研修」など国会議員の外遊増に批判が集まっている。国会議員については、一般人は選挙特番や国会中継、精々政治討論番組で目にするくらいだ。その実態と課題、改善策について記されているのが本書(2022年発表)。著者の濱本真輔氏は大阪大学准教授(…

ピンチこそ構造改革のチャンス

本書は、2015年に単行本で出版されたものを、2021年に加筆されて新書版で再版されたもの。8,000億円近い赤字を出して「会社が無くなるかもしれない」との危機から、構造改革でV字回復を成し遂げたマネジメントのお話である。 といっても、本書は僕にとって…

日本型閉鎖組織の改善策

2022年発表の本書は、同志社大学政策学部太田肇教授(経済学)の日本型組織研究。筆者には、同調圧力や承認欲求に関する著書がある。本書の目的は「消極的利己主義」が日本に蔓延している現象と理由、さらに解決策を示すこと。日本型組織は、 ・行政機関や企…

自国通貨建ての国債デフォルト

昨日「強権の経済政策」でジャーナリスト軽部氏の「アベノミクス評価」を紹介したが、では日本経済をどうすべきなのかを改めて見直すために、本書(2022年発表)を買って来た。著者の田村秀男氏は元日経の記者、現在が産経新聞で論説委員などをしている。長…

やはり要諦は人事

2020年発表の本書は、ジャーナリスト軽部謙介氏の「アベノミクス」評価。先に「官僚たちのアベノミクス」(2018年)という著書があるようだが、入手できていない。2012年末の総選挙で政権に返り咲いた自民党は、以降10余年にわたって政権を維持しているが、…

海外の視点で見た「デジタル日本」

2021年発表の本書は、「ルポ貧困大国アメリカ」などを著したジャーナリスト堤未果氏のデジタル日本への警告。以下の点は僕もよく知っていて、推進側を努めているのだが、批判的な視点だとこうなるのかと驚かされた。 ・最高権力を持つ「デジタル庁」 ・政府…

そのバッジの意味は何?

2020年発表の本書は、2019年にNHKスペシャルで放映された「崖っぷち?わが町の議会」の基になったアンケート結果の分析書。日本中の地方議員(県会・市会・町村会・区会)約32,000人に選挙ややりがい、議会の在り方など17項目の質問をし、約20,000回答を得た…

無意識データ民主主義の提案

2022年発表の本書は、イェール大学助教授の成田悠輔氏(専門は非常に広範囲*1)の民主主義の将来像。資本主義と民主主義は近代社会の両輪。資本主義で経済を廻して富を(富裕層や大企業に)稼がせるが、民主主義は一人一票なので大衆の意志が反映して富が再…

過疎「地域」対策の本質論

2022年発表の本書は、地方政策に悩んできた僕に、問題の本質を明らかにしてくれたもの。著者の花房尚作氏は、鹿児島育ちで世界を見たマルチタレント。政府には過疎対策はあっても、過疎地域対策がないと喝破する。その結果「人口が減る」という現象に対応す…

地球経済のマクロ観測2022

2022年発表の本書は、元経済企画庁長官宮崎勇氏と元日銀審議委員田谷禎三氏が書き続けてきた世界経済をマクロに見た書。前作が2012年発表で、宮崎氏が2016年に亡くなってからは、田谷氏一人で改訂作業をされたという。世界経済の輪郭に始まり、貿易、金融、…

反新自由主義ならば考えて欲しい

2020年発表の本書は、財政学・環境経済学が専門の京都大学諸富徹教授の税制論。僕たちがGlobal & Digital化は当然と思っているのに、多くの知の巨人が「それによって格差が拡大したし、容認している各国政府はけしからん」と非難している書を一杯読んだ。国…

チームになれば日本人は強い

2022年発表の本書は、以前「国土と日本人」を紹介した、国交省元技監大石久和氏の近著。自然災害が多く山脈や河川で分断された、脆弱かつ不便な国土で育った日本人は、コミュニティを作るのが巧み。城壁で敵と味方を分断する、欧州の文化とは違うのだと力説…

世界を動かしているのはカネ

2005年発表の本書は、東京銀行を振り出しに国際金融の世界を巡った倉都康行氏の現代金融論。1990年代に「金融Big-Bang」というブームがあり、僕自身金融の勉強をしたとことがあって、最後にたどり着いたのが本書。デリバティブズをはじめとする金融技術が落…

昭和の因習を脱ぎ捨てよ

2022年発表の本書は、何冊か著書を紹介した成毛眞氏と実践的な経済(経営?)評論家冨山和彦氏の共著。今月のNHK日曜討論で、政府の新しい資本主義実現会議メンバーでもある冨山氏が、 「地域や労働現場の現実はこうだと言っても、官僚や大企業社長は理解し…

ゲゼルシャフトが残る日本

2022年発表の本書は、経済評論家加谷珪一氏の日本経済(社会)のそもそも論。筆者のWeb上の論説は時々参考にさせてもらっていて、論理的な思考のできる人だと思っている。書籍としては2年前に「貧乏国ニッポン」を紹介している。この書は日本が安い国になっ…

パンデミックは世界規模の実験場

2021年末発表の本書は、何冊か紹介しているジャーナリスト大野和基氏が世界の識者にインタビューした記事の集大成「世界の知性シリーズ」。元原稿は<Voice>誌に2021年3~12月に掲載されたものである。 「COVID-19」禍は、世界に大きなインパクトを与え、…

「女性初」を追求したジャンヌダルク

統一地方選挙が終わり、政界はしばしの休息に入った。岸田政権の黄金の3年間は、あと2年を残しているが、波乱要因がないわけではない。その一つが<政局の女王>ともあだ名される小池都知事。TV東京のWBS(*1)キャスターから、日本新党で政局入りし多くの…

中国・左派メディア・野党・官僚批判

2021年発表の本書は、ジャーナリスト門田隆将氏の政治書。雑誌「Will」に2014~21年にかけて連載されてきた記事を中心に再構成したもの。著者については今年初めて読んだ「正論」等によく名前の出てくる人だが、著書を読むのは初めて。読んでみると、 勇気は…

Globalization と Mondialisation

2020年発表の本書は、知の巨人エマニュエル・トッド教授の近著。「シャルリとは誰か?」でフランスの危機に警鐘を鳴らした筆者が、先進国における民主主義の危機を取り上げた著だ。もともとグローバル化(Globalization)には反対の立場で、ヒトが自由往来す…

お金の、お金による、お金のための

昨日「アメリカ大統領選、勝負の分かれ目」で、米国有権者の動向を紹介した。本書は直近(2022年)に発表された、政策や選挙にまつわるお金の話である。著者の渡瀬裕哉氏は、機関投資家やヘッジファンドなどの動向を研究するエコノミスト。本書を「米国を理…

米国有権者の変遷と選挙戦略

2020年発表の本書は、日経新聞論説&編集委員である大石格氏の米国選挙事情レポート。トランプ再選なるかという同年秋の大統領選挙に向けて、選挙民がどう変わっているかと<ストラテジスト>と呼ばれる選挙参謀の仕事ぶりを紹介している。 選挙民そのものが…

道州制+二都構想

昨日金子教授の「人を救えない国」を紹介したが、問題意識は共有できるとして、地域分散革命が解決策と言われても、経済学ならともかく政治学上は困るなと思った。そこで手に取ったのが本書(2019年発表)、著者の佐々木信夫氏は中央大学名誉教授(行政学)…

地域分散ネットワーク社会の提案

2021年発表の本書は、立教大学教授金子勝氏の日本再生のための経済・社会論。著者は慶應大教授時代にTV番組の常連コメンテータで、僕もよく勉強させてもらった。副題にあるように安倍・菅政権批判が中心だが、ではどうすればいいかの回答は「地域分散ネット…

いよいよ本物?改革政党

統一地方選挙後半戦と同時に行われた衆参5選挙区の補欠選挙は、自民党の4勝1敗となった。1敗は衆院和歌山、維新の会が議席を獲得した。立憲民主党は、1議席の獲得も成らなかった。ここにきて、維新の会が野党第一党になる予感が現実のものになりつつあ…

続・アべ政治とは何だったのか

先月「自民党失敗の本質」を紹介した。第二次安倍~菅政権の官邸主導政治の功罪に迫る、8名の関係者へのインタビュー本であった。 アベ政治とは何だったのか - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 本書(2021年発表)はほぼ同じ時期の官邸政治について、朝日新聞デ…

政治団体「オリーブの木」の主張

2020年発表の本書は、YouTuberで政治団体「オリーブの木」代表の黒川敦彦氏の主張をまとめたもの。この団体の指向は、反グローバリズム・反新自由主義だが、「れいわ新選組」などの左派とは違うようだ。モットーは「なんでもできるさ、ピープルパワーで!」…