新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

政治・経済書

技術革命だけでは人類を変えきれない

2017年発表の本書は、5人の知の巨人にサイエンスライターの吉成真由美氏がインタビューしたまとめたもの。昨日紹介した「知の逆転」の後日談とも言え、テーマは「人類とテクノロジーの関係」である。登場する巨人は、 ノーム・チョムスキー(数学・言語学・…

限りなく真実を求めて

2012年発表の本書は、当代最大の(理系)知性を持った巨人6人へのインタビューをまとめたもの。インタビュアーはサイエンスライター吉成真由美氏である。その巨人たちとは、 ■ジャレド・ダイアモンド(UCLA教授) 生物学者でピューリッツア賞受賞者「文明は…

コミュニケーションが苦手な日本人へ

2017年発表の本書は、経済学者暉峻淑子(てるおかいつこ)氏のコミュニケーションを基軸に据えた社会論。冒頭「対話が続いているうちは、殴り合いは起きない」というドイツ人の言葉が紹介されている。これは真実で、 ・誘拐やたてこもり事件でも交渉している…

アベ政治とは何だったのか

2021年発表の本書は、菅政権末期の同年8月前後に「自民党」を長く見てきた8名の関係者・有識者に宝島社がインタビューした結果をまとめたもの。安倍・菅政権の9年間に批判的な人ばかりで、政権の功罪というよりは「罪」ばかりを取り上げた内容となってい…

再生可能エネルギーへの転換

本書は3・11東日本大震災と、それに続く福島第一原発(F1)事故当時、総理大臣を務めていた菅直人議員(立憲民主党)が2021年に発表されたもの。昨年「東電福島原発事故、総理大臣として考えたこと」を紹介しているが「これも読んで」と送ってもらった。 世界…

勇気は出るけど、蛮勇かも

昨日別ブログで、ニューオータニでの「正論大賞授賞式」に参加したことを書いた。僕が早々に引き揚げてから、岸田総理もお出でになったらしい。なかなか政治力のある月刊誌ということだ。その時、引き出物としてもらったのが本書。大賞受賞の織田元空将と、…

狂乱経済・社会の是正はなるか

今日3/8は「国際女性デイ」、中国の通販サイト等では11/11(独身の日)と並ぶ「女王節」の書き入れ時である。2022年発表の本書は、中国通のジャーナリスト青樹明子氏の現代中国経済レポート。習大人が、巨大ITを叩き、教育改革と称して塾などを潰し、有名俳…

南北統一への夢と現実

2020年発表の本書は、東大名誉教授(政治学)姜尚中氏の東アジア展望。政権批判番組「サンデーモーニング」のコメンテーターである筆者は、僕には日本政府批判の急先鋒に見える。同番組で、福島原発処理水のことを「汚染水」と言うのは、筆者と青木理氏の2…

日本はその時何ができるか

以前、台湾有事にあたっての米中戦争シミュレーション、渡部元陸自総監著「米中戦争~その時日本は」を紹介した。2017年出版とやや古い書だったが、作戦級のシミュレーションとしては充分勉強になった。 Air Sea Battle(ASB)はどう展開する? - 新城彰の本…

政治とは何か?リーダーはどうか?

本書は民主党政権末期の2012年に発表された、政治記者橋本五郎氏の政治リーダー論。第一次安倍内閣以降、政権は1年単位で交代していた。筆者はこれらの総理大臣を、政治リーダーとは見ていないようだ。筆者がまだ駆け出しだったころからの名だたる総理大臣…

主張の見えにくいレポート

2021年発表の本書は、朝日新聞の東京本社経済部長の伊藤裕香子氏の税制論。菅内閣が「COVID-19」対策の説明不備などあって、支持率を下げているころの出版である。菅総理の言葉にある「自助・共助・公助」の順番が違うのではないかと、野党が責め立てている…

二つの祖国を持った人からのエール

2020年発表の本書は、台湾出身の「日本人」金美齢氏からの日本人へのエール。強硬な台湾独立派の論客で、日本人よりも(古来の)日本人らしい人である。1934年台北生まれ、1956年に来日し早稲田大学を修了、日本で英語教育に携わった。二重国籍を認めない日…

国土に働きかけてこその恵み

本書は、国交省の元技監大石久和氏の「国土論」。東日本大震災の翌年、2012年の発表である。国土庁から道路局長とインフラ行政の裏面を知り尽くした技術者である筆者とは、震災前に知己を得てインフラのデジタリゼーションについて議論させていただいた。震…

是非ではなく事実として

昨日「医の希望」を紹介して、人が健康で長く暮らせる(働ける)社会になったことを再確認した。僕も今月で67歳。60歳そこそこで亡くなった多くの先達のことを思うと、幸福な時代を生きてきたと感じる。 本書は、平成という30年間の日本や世界の変化をデータ…

<クーリエ・ジャポン誌>上の成長産業

昨日<クーリエ・ジャポン誌>に掲載された16人の識者のインタビュー記事をまとめた「新しい未来」を紹介した。本書はこの書と同じ2021年に発表された、世界企業14社のCEOにインタビューした記事の集大成。 いわゆるGAFAMやスペースXの記事はよくあるが、Ne…

<クーリエ・ジャポン誌>上の叡智

2021年発表の本書は「COVID-19」禍を受けての新しい世界展望について、世界16名の叡智が語ったもの。<クーリエ・ジャポン誌>は僕も時々読んでいる、Web上の知的メディア。本書は2020年に掲載した記事をベースに、補筆するなどして主張を1冊にまとめている…

日本が抱える「内憂外患」

2021年発表の本書は、内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦氏が<Voice誌>の巻頭言を2018~2020年にかけて執筆した内容をまとめたもの。先日筆者が<朝までナマTV>で「国会で秘密会をやってくれ」との発言に注目して、本書を読んでみた。 国会の秘密会と議…

「生きづらさ」を覚える人々

2019年末、まだ「COVID-19」禍が始まる直前に発表された本書は、朝日新聞記者牧内昇平氏の政治分析。この年9月の参議院議員選挙で2議席獲得した<れいわ新選組>と、山本太郎代表に関するレポートである。 筆者は本書で、非正規から抜け出せない人、貧困で…

11人のプロボノ著者たち

本書は今日(2023年1/30)発売されるもの。なぜそんなものを持っているのかと言うと、著者の一人から事前に貰っていたから。こういうのを「私家版」というのだっけ。テーマは「昨今リスクが急騰しているサイバー攻撃にどう備えるか」である。 サイバーセキュ…

国際的宗教の自由法

2021年発表の本書は、名古屋市立大学松本佐保教授(専門は国際政治史)の米国内の宗教事情レポート。プーチンの支持勢力にロシア正教、トランプの支持勢力にキリスト教福音派がいることは、よく知られた事実。本書はもう少し深堀して、米国政治に宗教がどう…

衣食足り、家族の幸福を

2022年発表の本書は、以前「中国人のお金の使い方」を紹介したジャーナリスト中島恵氏の近刊。前著はアッパーミドルクラスの中国都市市民の日常と、生活感を描いたものだった。本書は、それから1年経ち、もう少し庶民的な都市部の市民の「ゼロコロナ・共同…

「千三」と言われた経営者

2022年発表の本書は、昨年惜しくも亡くなった出井伸之氏のビジネスマンに対する「応援歌」。著者には20年ほど前にお会いし、デジタル政策の文書をまとめることのお手伝いをさせていただいた。曰く「官僚に筆を持たせるな」。本書にも、企業が監督官庁を意識…

全共闘出身の東大教授

今日1/21は、本書の著者西部邁氏の命日である。著者は本書を口述し校正まで終わった2018年の今日、多摩川で入水自殺を遂げる。享年78歳。50歳代のころから死に方を考えていて、何度か自殺を考えている。2014年に奥様を亡くしてから、決意を固めたらしい。 著…

Economic Statecraft(ES)の時代

本書は今月(2023/1)発売されたばかり。先に「ガバメントアクセスと通商ルール」を紹介したCFIEC編の国際情勢論である。この団体とは、国境のないサイバー空間での議論をさせてもらっている関係で、このような書籍を送ってもらえている。本書のテーマは、ウ…

「静かな有事」の世界版

2021年発表の本書は、この2日「未来の年表」2冊を紹介したジャーナリスト河合雅司氏の、世界版少子化問題を分析した書。「静かな有事」と言われるこの問題、実は日本だけのことではない。今年80億人に達したという総人口、国連の推計では2100年に110億人に…

少子化日本の処方箋(後編)

筆者は少子高齢化を「静かなる有事」とよんで、危機感を露わにする。では、その危機に対しての10の処方箋とは、 ■戦略的に縮む 1)高齢者の定義をもっと高い年齢にし、高齢者数を減らす 2)便利すぎる24時間社会を止め、必要な労働力を減らす 3)コンパク…

少子化日本の処方箋(前編)

今日明日と、ジャーナリスト河合雅司氏の少子化日本の処方箋「未来の年表」を紹介したい。「日本でこれから起きること」と副題された第一作が2017年に、「日本であなたに起きること」という第二作が2018年に出版されている。 どちらも前半は「起きること」な…

雌鶏が鳴き叫べば、家が滅ぶ

昨年も一杯ミサイルを撃ってくれた北朝鮮。国内経済は瀕死の状態のはずなのに、独裁者金正恩の暴挙は止む気配がない。加えて妹金与正の言葉も激しくなってきている。かつて平昌五輪の時に兄と一緒に現地を訪問し、柔和な印象を与えた彼女とは人が替わったか…

フランスの危機、2015年1月11日

本書は以前「グローバリズム以後」「ドイツ帝国が世界を破滅させる」などを紹介した、歴史人口学者・家族人類学者エマニュエル・トッド氏が、<シャルリーエブド事件>をきっかけに母国フランスを見つめ直した書。この出版社を襲ったテロ事件は2015年1月7…

政府へのデータ活用制約提案

21世紀は「Data Driven Economy」の時代だが、データの活用は産業界だけのテーマではない。むしろ各国政府にとって、より大きな意味を持つ。いい意味では「Evidence Based Policy Making」のような、確とした統計データに基づく政策決定のようなこともあるだ…