新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

本格ミステリー

トリックの見つけ方

本書は鮎川哲也の短編集、恐らくは雑誌などに掲載されたものを光文社で短編集にしたものと思われる。表題通り、アリバイが争点となる短編4作と中編がひとつ、それに、 ・時刻表5つのたのしみ ・私の発想法 という2つのエッセイが添えられている。「発想法…

カルデラ湖が好きな女

津村秀介の長編小説は60作ほどある。国内の公共交通機関を使ったアリバイ崩しものが大半で、僕の大好きなシリーズだ。そのほとんどを読んでしまって、本棚には最後の作品「水戸の偽証」が残っているだけ。「水戸の偽証」を発表した後、作者が急逝してしまっ…

名古屋弁を話す検事

「憲法おもしろ事典」などを紹介してきた弁護士作家の和久俊三。多くのミステリーの執筆しているが、一番多いのは「赤かぶ検事もの」ではなかろうか。検察事務官からたたき上げ、副検事に昇進、高年齢になってからようやく検事に任官した柊検事が主人公であ…

「ブロードウェイの名花」殺し

1927年発表の本書は、米国で近代ミステリーの歴史を作った作家、S・S・ヴァン・ダインの第二作である。美術評論家W・H・ライトは病気療養中に多くのミステリーを読み、明白な欠陥がありながら版を重ねているものが多いことを知り、自ら執筆することにした。選ん…

1940年代英国の代表的パズラー

1943年発表の本書は、アガサ・クリスティーの後継者とも言われたクリスチアナ・ブランドの第三作。1940~50年代に英国で代表的なパズラーと言えば彼女のことだと思う。ほぼ「Who done it?」を中心に据え「読者への挑戦」こそないものの、唯一の犯人を示すロ…

雪の中の降霊術の会

1930年前後の女王クリスティは、意外な犯人というテーマを追い求めていたように思う。「アクロイド殺害事件」や「オリエント急行の殺人」など古典的な名作も、その意識から生まれたと思う。この2作には探偵役としてエルキュール・ポアロが登場するが、レギ…

軽口と言葉遊びが一杯

1984年発表の本書はW・L・デアンドリアの第6作、巨大TV局<ネットワーク>のもめごと処理担当副社長マット・コブが登場するシリーズとしては第4作にあたる。前作で自身の故郷に出かけて事件を解決したマットだが、本書ではホームグラウンドのニューヨークで…

45年前の集団就職列車

何度も紹介している津村秀介の伸介&美保シリーズ、2000年発表の本書は最後から2冊目の作品である。あと1冊しか本棚に残っていないのは寂しい限りだ。初期のころは鉄道など公共交通機関を使って日本中(時には海外も)走り回って作られたアリバイを崩す面…

カーが好きだった江戸川乱歩

本書は創元社が独自に編集したジョン・ディクスン・カー(別名カーター・ディクスン)の最後の短編集。長編はいくつか紹介しているが、作者は多くの短編や脚本も遺した。本書には、ラジオドラマ脚本2本、シャーロック・ホームズのパロディを含む4編の短編…

プロットそのものがトリック

本書は、多作家西村京太郎の1971年の作品。まだレギュラー探偵十津川警部らが登場する以前の作品だが、このころの著作には力作が目立つ。本書はある意味、パズラーの極限を目指したもので、プロットそのものがトリックのようなミステリーだ。「プロトリック…

探偵小説はやはり短編

ミステリーの始祖エドガー・アラン・ポーが残したのは、20~50ページほどの短編ばかり。その後「月長石」のような600ページ以上の長編も出るのだが、初期の頃どうしても本格ミステリーは短編が主流だった。本書はアーサー・コナン・ドイルの最初のシャーロッ…

記念すべきクイーン父子登場作

本書は(S・S・ヴァン・ダインはいたものの)米国ミステリー界を大きく飛躍させる新世代を拓いた1冊である。1929年、いとこ同士で24歳だった2人が共著したもので、ある雑誌の懸賞に応募し当選したもの。雑誌は廃刊になってしまったが、単行本として陽の目を見…

被害者のねじれた性格

本書(1938年発表)は、女王アガサ・クリスティが脂の乗り切っていたころの作品。「スタイルズ荘の怪事件」でデビューし「アクロイド殺害事件」でソロホーマーは打ったものの、明るいスパイものなどの評価は高くない。しかし彼女は、1930年代中盤から連続ヒ…

西87番街「Veterans」

本書は巨匠エラリー・クイーンの晩年の作品、1968年の発表でリチャード・クイーン警視が定年退職しているが、新妻ジェシイとの新婚旅行(行き先はナイアガラ瀑布だったらしい)から帰ったばかり。ニューヨーク西87番街のアパートで、エラリーを含む3人の生…

志摩半島の公共交通

本署(1999年発表)は津村秀介の「伸介&美保シリーズ」の1冊。60余冊ある作者の長編ミステリーも、本棚に残るのは2冊になってしまった。作者が、2000年に67歳の若さ(僕ももうじきその年になる)で急逝してしまったことが惜しまれる。浦上伸介という名探…

Qの悲劇

エラリー・クイーンは「災厄の町」以降、たびたびニューヨークの北に位置する田舎町ライツヴィルを訪れる。これは架空の街だが、エド・マクベインのアイソラとは違って、古い落ち着いた変化の少ない街である。住民はほとんどが知りあい。名家と認識されてい…

蔵王温泉周辺でのアリバイ

本書(1969年発表)は、「本格の鬼」鮎川哲也の鬼貫警部もの。まだ新幹線は東海道だけ、長距離電話も地方によっては交換台を経由してという時代の作品である。舞台は芸能界で、クラシック歌手の鈴木久美子とピアニストの夫重之の夫婦喧嘩から物語が始まる。1…

女王初期の短編集

女王アガサ・クリスティーは、1920年代にはまだ手法が完成しておらず、ポワロ&ヘイスティングズの本格ミステリー、トミー&タペンスの明るいスパイものなどを取り混ぜて長編小説を発表していた。正直後年の作品集に比べると、単発ものの「アクロイド殺害事…

オカルトと科学の融合

本書は、以前紹介した東野圭吾の「ガリレオシリーズ」の第二短篇集。1999~2000年の間に<オール読物>に掲載された5編が収められている。TVシリーズのように女性刑事は登場せず、大学時代の同級生草薙刑事からもちこまれる「怪事件」を湯川助教授が解決す…

ブルームズベリーの古いアパート

以前「名のみ知られた名作」をいくつか紹介した。書評に「名作」とありながら、絶版になっていて普通の書店では手に入らないミステリーたちである。例えば、ヘレン・マクロイ「幽霊の2/3」とロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」を手に入れた嬉…

9月14日PM10:23の銃声

本書は巨匠エラリー・クイーンの後期の作品、1965年発表で以前紹介した「第八の日」の次に位置する。作者たちはこのころのエラリーをいろいろなシチュエーションに置いて、ある意味試練を与えている。前作ではネバダ砂漠に迷い込んだし、本書ではライツヴィ…

インド王家の宝石

本書はコナン・ドイル著、シャーロック・ホームズものの長編4作のうちの第二作。第一長編「緋色の研究」も、200ページのうち事件と謎解きは半分で終わり、あとは事件の背景となったある種の冒険譚が語られていた。その傾向は本書にもあり、200ページ中、最…

トリックの女王・・・の娘

TVの2時間ドラマの王様格の人(原作者)はたくさんいるが、女王と言えば恐らくこの人山村美紗だろう。以前名探偵キャサリンものをいくつか紹介しているが、金髪碧眼で巧みに日本語を操る主演女優を探すのは難しく、名探偵「希麻倫子」となってかたせ梨乃主…

カゴ抜けをした死者

本書(1998年発表)は、津村秀介のご存じ「伸介&美保もの」の一編。「長崎異人館の死線」同様、美保が高校時代の同級生真里と節子と共に「女子大生の好奇心旅行」に出かけて事件に巻き込まれる。今回の舞台は大阪発札幌行きの豪華寝台特急「トワイライトエ…

男女7人殺人物語

本書は「本格の鬼」鮎川哲也が、1950年代に発表したもの。「年代」という言葉を使ったのは、本書が一度は違うペンネームとタイトルで連載されたものなのに、その後鮎川哲也名義で現在のタイトルで再び別の雑誌に連載され、後に単行本化されたからだ。 複雑な…

教師探偵キャロラス・ディーン登場

英国にはまだまだ隠れたミステリー作家や探偵がいるものだと、本書(1955年発表)を読んで痛感した。作者のレオ・ブルースは、英国では名の知られた作家で、イングランドの地方都市を舞台にしたビーフ巡査部長シリーズを8冊、本書がデビュー作のキャロラス…

ユトリロと大観の贋作

1985年発表の本書は、内田康夫初期の力作。白皙の名探偵、警視庁岡部警部が登場する。最初の事件は彼がまだ警視庁に入ったばかりのころ、新婚旅行から帰ったばかりの実業家夫婦が碑文谷の自宅で何者かに襲われ、夫(29歳)が刺殺された件。新妻の華子は美女…

片田舎のよそ者兄妹

本書(1943年発表)は、ひさびさのミス・マープルものである。1930年に「牧師館の殺人」でデビューした、セント・メアリ・ミード村の老嬢ジェーンは、12年を経て「書斎の死体」で二度目の探偵役を務める。 https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2020/07/15/…

6組のカップルを襲うもの

本書(1945年発表)は以前「迷走パズル」と「俳優パズル」を紹介した、パトリック・クェンティンのピーター&アイリス夫妻のシリーズ第四作目。実は第三作「呪われた週末」は、別冊宝石に邦訳が掲載された後再版されたかどうかもわからず、入手できていない…

事件関係者のさまざまな嘘

本書(1940年発表)は女王アガサ・クリスティーの「ポワロもの」の1冊。1920年「スタイルズ荘の怪事件」でデビューした英語の怪しいベルギー人探偵ポワロは、派手なトリックを暴きや意外な犯人を名指しして15年ばかりを過ごした。しかし1930年代後半から、…